
海辺の村で真珠採りをしていた少女、海市(かいし)は、人魚が流す涙が真珠になると信じられている世界で生きていました。ある日、役人が人魚を強制的に差し出させようとしたことで、海市(かいし)の父親は命を落とします。絶望の淵に立たされた海市(かいし)を救ったのは、大徵国の権力者、方諸でした。
方諸は類まれな武術と知略を持つ清海公であり、皇帝・帝旭(ていそく)の絶大な信頼を得て、国を影から支えていました。海市(かいし)の機転と勇気に感銘を受けた方諸は、彼女を弟子として迎え入れ、男装させて武芸や知識を授けます。こうして海市(かいし)は、方諸と共に宮廷と江湖の複雑な世界へと足を踏み入れることになります。
日々の鍛錬の中で、海市(かいし)は方諸に深い恋心を抱くようになります。しかし、国への重い責任と過去の傷を抱える方諸は、自らの感情を抑えつけていました。さらに、方諸に強い信頼を寄せる帝旭(ていそく)の存在も、二人の関係を複雑なものにしていきます。宮廷での生活は危険と隣り合わせでしたが、海市は持ち前の知恵と方諸の教えを頼りに、次第に宮廷内で確固たる地位を築いていきます。
大徵国は、外敵の脅威や国内の権力争いなど、様々な問題を抱えていました。方諸は清海公として、帝旭(ていそく)と国を守るために尽力します。海市もまた、方諸と共に暗殺や謀反といった危機に立ち向かい、国のために戦います。戦場では、男装の海市は勇敢な姿を見せ、その名は広く知られるようになります。
帝旭(ていそく)は過去の出来事から心を病み、次第に情緒不安定になっていきます。方諸はそんな帝旭(ていそく)を支えつつ、海市への想いに葛藤します。海市もまた、方諸への愛と国への忠誠の間で揺れ動きます。
物語は佳境へと進み、様々な陰謀が交錯します。数々の苦難と試練を乗り越え、帝旭(ていそく)、方諸、そして海市は、国の危機に立ち向かいます。激動の時代の中で、海市と方諸の愛はどのような結末を迎えるのでしょうか。困難を乗り越えた二人は、国と愛する者を守り、激動の時代の中での安息の地を見つけ出すことができるのでしょうか。
「斛珠夫人~真珠の涙~」は、宮廷ドラマ、ロマンス、ファンタジー、そして権力争いといった様々な要素が複雑に絡み合った物語です。登場人物たちの愛憎劇、そして過酷な運命に翻弄されながらも成長していく姿を描いています。
第1話あらすじとネタバレ
大徴では過酷な真珠税のため、漁民たちの生活は困窮を極めていた。貴重な鮫珠を得るため、我が子を犠牲にして人魚の涙を求める者さえいた。葉海市(かいし)もまた、このような状況下で命の危険に晒され、父と村人を失う悲劇に見舞われた。生死の境を彷徨う彼女を救ったのは、方諸という大徴の権臣だった。
銀色の仮面をつけた方諸は、葉海市(かいし)に天啓城へ行くことを提案する。母と村人の安全を案じる葉海市(かいし)に対し、方諸は彼らの保護を約束し、彼女に二つの選択肢を与えた。女の子として安穏な暮らしを送るか、男の子として多くの可能性を掴むか。葉海市(かいし)は迷わず後者を選び、運命を変える機会を掴もうとした。
方諸は弟子の方卓英(ほうたくえい)に村人の世話と事件の真相究明を任せ、自身は葉海市(かいし)を連れて天啓城へ向かった。方卓英(ほうたくえい)もかつて紅薬原で家族を失い、方諸に育てられた過去を持つ。葉海市(かいし)の瞳に非凡な可能性を感じた方諸は、彼女を導き育てる決意を固めた。
夜、悪夢にうなされて目を覚ました葉海市を、方諸は優しく慰めた。仮面姿の方諸に恐怖を感じた葉海市だったが、仮面を外した彼の顔を見て安堵し、再び眠りについた。
狩りに出かけた皇帝、帝旭(ていそく)は儀王の残党に襲撃される。帰路、異変に気付いた方諸は、すぐさま救援信号を送った。偶然にも、この騒動で葉海市は帝旭(ていそく)の命を救う。真珠税を製定したのが帝旭(ていそく)だと知った葉海市は、衝動的に復讐しようとするが、方諸に製止される。しかし、毒矢を受けた帝旭(ていそく)と、その毒に冒された方諸は倒れ、緊急治療が必要となった。
蘇将軍は捕らえた儀王の残党を尋問するが、彼らは拷問にも屈せず、情報を吐こうとしない。膠著状態の中、蘇将軍の元に二人の儀王残党が府門前に放置されているとの報告が入る。蘇将軍は直ちに彼らを捕らえ、尋問を再開させた。
任務を終えた方卓英(ほうたくえい)は、葉海市の母が無事であることを伝え、母から預かった魚梭を彼女に渡す。そして、師について技を学ぶよう励ました。
方諸が宮中へ行く度に、葉海市は家で帰りを待っていた。この日も、帰ってきた師の姿を見て喜ぶ葉海市。しかし、師の腕の傷に気付くと、すぐに手当てをし、宮中での勤めを願い出る。少しでも早く環境に慣れ、師の役に立ちたいという思いからだった。だが、方諸は時期尚早だと判断し、彼女の願いを聞き入れなかった。
尋問中、蘇将軍は方鑑明(ほうかんめい)が生きていると証言する儀王残党を捕らえる。方鑑明(ほうかんめい)は蘇将軍の父を殺した仇敵だった。怒りに駆られた蘇将軍は、その場で男を殺してしまう。
葉海市は、負傷した師のために心を込めて薬膳スープを作る。方卓英(ほうたくえい)は、自分が怪我をした時にはこのような待遇を受けなかったことに少し嫉妬する。しかし、方諸がスープを美味しいと褒め、二人に試練を与えた時、葉海市は目を輝かせた。試練に合格すれば、宮中で勤めができるかもしれないと期待していたからだ。
第2話あらすじとネタバレ
方海市(かいし)は毎日熱心に弓術の稽古に励んでいるが、兄の方卓英(ほうたくえい)は胡麻餅を食べながら、彼女の生活を楽しむことを知らない様子をからかっていた。哨子は方卓英(ほうたくえい)に定清散をもらいに来た際に二人の会話を偶然耳にし、東角門の壁を乗り越えれば宮中への近道になることを知る。方海市(かいし)は一計を案じ、誰にも気づかれぬうちにこっそりと壁を乗り越えて宮中へ入ろうとするが、今回は方卓英(ほうたくえい)に見つかってしまう。方卓英(ほうたくえい)は今回は見逃すが、もし再び同じことをすれば師に告げ口すると警告する。
二人が館捨に戻ると、師匠が既に帰ってきているのを発見し、危うく秘密がバレそうになる。幸いにも、方海市(かいし)の機転で師の注意をそらすことに成功する。その時、宦官が帝旭(ていそく)に、もうすぐ上元節なので提灯飾りの準備が必要だと告げる。これを聞いた帝旭(ていそく)は、かつて紫簪(しさん)と上元節に出会い、楽しいひと時を過ごした記憶を思い出す。
師匠に参湯を届けるため、方海市(かいし)は台所へ向かう。方諸はその後、姐弟に灯会へ行くように勧めるが、彼自身と方海市(かいし)は家に残ることを選ぶ。方海市(かいし)は師匠のために元宵を作るつもりだった。しかし、哨子が公務の報告に来た時、方海市(かいし)は思わず師匠の仕事について意見を述べてしまい、叱責を受けてしまう。同時に、方諸は哨子に帝旭(ていそく)を密かに守るよう指示するが、疑いを招かないよう距離を保つようにと釘を刺す。
上元節当日、方諸は帝旭(ていそく)に付き添い灯会を散策する。賑やかな人々や見慣れた景色を前に、帝旭(ていそく)は紫簪(しさん)と過ごした過去を思わずにはいられない。蘇鳴は逆賊は既に討伐されたと報告するが、帝旭(ていそく)は人混みの中、屋台で元宵を食べることにこだわり、方諸の安全に関する忠告にも耳を貸さない。
灯会で、方卓英(ほうたくえい)と方海市(かいし)は一緒に遊び、方海市(かいし)がある玉環を気に入っていることに気づいた方卓英(ほうたくえい)は、玉環をたくさん買い、霽風館には独身者が多いからと冗談を言いながら、皆に一つずつ配る。この玉環は通常、恋人への贈り物として使われるものだが、方海市(かいし)は受け取らず、方卓英(ほうたくえい)に師匠に贈るよう勧める。二人が花火を見物している時、方海市(かいし)は肩をぶつけられたことをきっかけに不審人物を追跡する。同時に、方卓英(ほうたくえい)は気になる女性を見つけるが、その女性はすぐに姿を消してしまい、彼もまた方海市(かいし)がいなくなっていることに気づく。
一群の刺客が突如方諸を襲撃する。方諸が刺客と応戦している最中、方海市は帝旭(ていそく)に近づき危害を加えようとするが、方諸に阻止され、帝旭(ていそく)を守らなければならないと諭される。方海市は帝旭(ていそく)を暗殺したい気持ちと、方諸への動揺の間で葛藤する。帝旭(ていそく)は方海市について尋ね、彼女のことを面白い人物だと感じる。
蘇鳴は、襲撃に参加した刺客が全員方諸に殺されたことを知り、怒りを覚える。方諸は何の情報も漏らしたくないと考えている、ひょっとしたら自分が黒幕だと気づいているのではないかと疑う。蘇鳴は自分は帝旭(ていそく)に忠誠を誓っており、帝旭(ていそく)も自分に絶対の信頼を置いていると自負しており、もし幼馴染でなければ、方諸は今頃生きていないだろうと考える。
灯会が終わった後、方卓英(ほうたくえい)はこっそり抜け出したことを心配し、怪我をした師匠に薬を届けられずにいる。方海市が代わりに薬を届けに行くが、上半身裸の師匠を偶然見てしまい、顔を赤らめる。夜更け、方海市は師匠との夢を見て、目が覚めてからも頭の中は師匠のことでいっぱいになり、自分が恋をしていることに気づく。心を落ち著かせようと、書斎に閉じこもって経文を書き写す。方諸は方海市の最近の異変に気づき、病気ではないかと心配し、隠さずに医者に見てもらうように勧める。しかし、方海市は心に秘めた思いがあり、この「病気」に効く薬があることを願っている。
間もなく、蘇鳴は四皇子季昶が注輦部の緹蘭公主を伴って帰朝する予定だと報告する。帝旭は蘇鳴に注輦部の君主に、四皇子の帰朝は避けられないが、緹蘭公主は大徴に来る必要はないと伝えるよう命じる。また、上元節で自分が襲われたことをわざと持ち出し、刺客の標的は自分ではないと仄めかし、蘇鳴の仮応を探る。蘇鳴はこの言葉を聞き、不安を覚える。
鞠典衣は方諸に鵠庫からの情報として、左菩敦王が軍隊を率いて黄泉関へ向かっていることを伝え、今は出兵に適した時期ではないと指摘する。さらに、鞠典衣は自分の目の病気が悪化しているため、姪の柘榴(しゃりゅう)を宮中に連れてきて一緒に暮らし、自分の後継者にふさわしいか見極めたいと申し出る。方諸は彼女の頼みを聞き入れるが、鞠典衣が持ってきた上質な茶を皆に分け与え、彼女の好意をやんわりと断る。
ある日、方海市は方卓英(ほうたくえい)に、もし誰かが帝旭を殺そうとしたら師匠はどうするかと尋ねる。方卓英(ほうたくえい)は、師匠は犯人を必ず捕まえるだろうと答える。方海市は、師匠が生かして捕らえるなと命じる理由が分からず、その裏に隠された理由を知りたがる。
ある時、方諸は方海市と方卓英(ほうたくえい)がじゃれ合っているのを見て、方卓英が方海市に気があるのだと勘違いし、厳しく釘を刺す。方海市の最近の寝不足を心配した方諸は、彼女の部屋の前で座禅を組む彼女に付き添う。
第3話あらすじとネタバレ
方海市(かいし)は休憩中にうっかり居眠りをしてしまい、方卓英(ほうたくえい)にいたずらでからかわれます。そのせいで海市(かいし)は首を寝違えてしまい、卓英がマッサージをしてあげます。この場面を師匠の方諸に見られてしまい、方諸の顔色は曇ります。卓英は昨日の師匠の忠告を思い出し、慌てて海市(かいし)から距離をとります。方諸が宮中へ行く機会を利用して、海市(かいし)は上元節の刺客事件の真相を調べようとします。
方諸は宮中で帝旭(ていそく)に拝謁し、季昶が缇蘭公主と共に帰朝したことを知ります。帝旭(ていそく)は霽風館に二人の出迎えを命じます。長年、帝旭(ていそく)は紫簪(しさん)への想いのため注輦国に寛容な態度をとってきましたが、注輦国王が帝旭(ていそく)の家事に幹渉しようとしていることに不満を抱いています。帝旭(ていそく)は缇蘭公主に会いたくありませんが、大徴の平和のため、拒否できないことを理解しています。方諸は公主に罪はないと進言しますが、帝旭(ていそく)は激怒し、方諸に自分の立場をわきまえ、影として本分を守るようにと釘を刺します。今回は季昶だけが帰ってくればいいと思っています。
方海市(かいし)は上元灯会の刺客事件に関わった蒙面黒衣人二人を捕らえ、黒幕の正体を問い詰めます。そこへ方諸が現れ、刺客たちに、行動を止めれば不問に付すが、そうでなければ容赦しないと警告します。海市(かいし)の行動により、方諸は海市(かいし)に謹慎と館規二百回の手写を命じます。
失敗を償うため、海市(かいし)は卓英の代わりに季昶の出迎え任務をしたいと申し出ます。条件は、比試で卓英に勝つこと。比試では、卓英は最初は容赦なく戦いますが、最後は海市(かいし)に勝ちを譲ります。しかし、海市(かいし)が師匠に願い出ると、静室での面壁と館規二百回の手写を命じられてしまいます。
卓英は親迎使に任命され、四皇子季昶と注輦国の缇蘭公主を出迎えることになります。帝旭(ていそく)は、今回の任務の重点は季昶の帰朝であり、缇蘭公主が天啓城に来ることを望んでいないと強調します。出発前、卓英は師匠に別れを告げ、帝旭(ていそく)の特別な指示に戸惑いを覚えます。方諸は卓英の成長を褒めますが、帝旭(ていそく)の指示通り季昶の安全を守ることだけを考え、他のことは自分が処理すると告げます。
帝旭(ていそく)は急遽、水心苑行宮で温泉に入ることになり、霽風館に警護を命じます。方諸を始めとする全員が参加することになります。海市(かいし)は館規の知識を披露して同行を願い出ますが、許可されず、静室に戻って書き写しを続けるように言われます。
こっそり抜け出した海市(かいし)は卓英を見つけ、四皇子出迎えの任務に同行したいと頼みます。海市は四皇子の帰朝と注輦国との婚姻は平和の象徴だと考えますが、最近港に多くの見慣れない船や商人たちが現れ、婚姻を妨害しようとしているのではないかと疑っています。卓英は、師匠がすでにこの状況を予測しており、鵠庫と西南のいくつかの小部族が、両国の婚姻によって強大な勢力が生まれることを恐れて妨害工作をしていると明かします。しかし、帝旭(ていそく)の指示は季昶の安全確保です。
西平港の陳赫然が訪ねてきて、海市と卓英が一緒にいることに驚きます。卓英は海市を弟だと説明し、海市は陳赫然に四皇子と缇蘭公主の天啓城への護送のための兵を借りたいと頼みます。陳赫然は千人の兵を提供することを約束し、兵の配置計画を詳しく説明します。三つの部隊を作り、一つは四皇子を、もう一つは缇蘭公主を護送し、三つ目は海市が公主に扮して偽の四皇子と共に移動するという計画です。
様々な対策を講じたにもかかわらず、缇蘭公主の乗る二番目の隊列は襲撃を受けてしまいます。女装した海市が偽の公主として最後に出発しますが、馬車の中で外の異変に気づき、陳赫然の言葉を思い出し、何か問題があると察知します。そこで男装に戻り、来るべき危機に備えます。
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