第10話あらすじとネタバレ
緹蘭は南宮へ流された。人裏離れた寂しい場所で、使用人達さえも彼女を避ける。しかし、緹蘭はこの静寂を好ましく感じていた。誰にも邪魔されず、月光に照らされた夜は、まるで桃源郷にいるかのよう。帝旭(ていそく)に会う緊張から解放され、穏やかな日々を送っていた。
方諸は哨子に荷物の整理を指示するが、方海市(かいし)の部屋だけはそのままにしておくよう伝える。霽風館に残るように言われた方海市(かいし)は不満げだ。昭明宮で師父や方卓英(ほうたくえい)と共に暮らすことを望んでいたからだ。方諸は、成長した方海市(かいし)が男性ばかりの昭明宮に住むのは不便であり、いずれ女性の姿に戻る日が来ると諭す。
鞠柘榴(しゃりゅう)は重要な刺繍に没頭し、何日も徹夜していた。心配する柘榴(しゃりゅう)に、鞠典衣は出来栄えを確認してもらう。完璧な出来栄えに柘榴(しゃりゅう)は感嘆する。鞠典衣は木綿花の刺繍を帝旭(ていそく)に献上する。方諸の故郷では、花嫁が嫁ぐ際に木綿花の刺繍を贈る風習があった。刺繍を見た方諸に、帝旭(ていそく)は何か言いたげだったが、方諸は知らないふりをする。
越州から戻った方卓英(ほうたくえい)に、方海市(かいし)は笑顔を見せる。科挙の殿試で第三位になった方海市(かいし)を、方卓英(ほうたくえい)はからかいながらも祝福する。まもなく謁見があるが、たとえ首席でなくても殿中郎になれると励まし、きっと多くの女性に言い寄られるだろうと冗談を言う。方卓英(ほうたくえい)は方海市(かいし)の母から預かったお菓子を渡す。それは方海市の大好物で、彼女は喜びをかみしめる。同時に、朝廷への忠誠と師父への孝行を母から伝えられる。
夜、綾錦司で盲繡の練習をする柘榴(しゃりゅう)に、方卓英(ほうたくえい)は真珠の腕輪を贈り、姿を消す。柘榴(しゃりゅう)が贈り物に気付いた時には、既に方卓英(ほうたくえい)はいなかった。
ある日、兎を抱いた柘榴(しゃりゅう)は癒安宮の前で帝旭(ていそく)と出会う。兎について尋ねられた柘榴は、自分のペットだと答える。その後、帝旭(ていそく)は南宮を訪れ、琴を弾く緹蘭を見つける。仮省の場である南宮で楽しむべきではないと釘を刺す。緹蘭が龍尾神を彫っているのを見た帝旭(ていそく)は、誰のために祈っているのかと問いただす。緹蘭は自分のためだと答える。
紫簪(しさん)がかつて出征する兵士のために柏溪を彫ったことを思い出し、帝旭は緹蘭に三万の新兵のために龍尾神を彫るよう命じる。
ある日、如意坊で玉器を買っていた方海市は、役人の娘達に囲まれ、褒め称えられる。このような事態を避けるため、方海市は女装を決意する。仕立て屋から出た彼女は偶然幼度公子と出会い、女性であることを見抜かれる。
時刻を間違え、謁見に遅刻してしまった方海市。方諸は捜索を命じ、方卓英は街で女装し、氷糖葫芦を持つ方海市を見つける。謁見を恐れた方海市は逃げ出そうとする。大殿では、方諸が方海市の毒の再発を理由に欠席を申し出る。帝旭は咎めず、方海市と卓一凡を北府軍殿中郎に任命する。
方諸は方海市をかばったが、帝旭は彼女が無事であることを知っている。案の定、二人は酒場で発見される。方諸に諭された方海市は自分の非を認め、方諸は彼女を昭明宮に戻すことを許す。
第11話あらすじとネタバレ
緹蘭が護符を彫っている最中に誤って手を傷つけ、出血が止まらなかった。穆徳慶は帝旭(ていそく)に報告したが、帝旭(ていそく)は煩わしく思い、気に留めなかった。
霽風館は今日昭明宮に引っ越したが、方海市(かいし)は二日後に引っ越す予定だった。しかし、今日は方卓英(ほうたくえい)と共に宮中に入り、綾錦司で官服の採寸をすることになっていた。綾錦司の名前を聞いた途端、方卓英(ほうたくえい)は逃げ出してしまった。
柘榴(しゃりゅう)が方海市(かいし)の採寸をしている時、方海市(かいし)は柘榴(しゃりゅう)が身に著けている真珠の腕輪が尋常ではなく、天啓ではなく越州の様式であることに気付いた。その時、施叔父が現れ、方海市(かいし)が方諸の弟子だと知ると、方諸と鞠家の婚礼が間近に迫っていることを嬉しそうに話した。方海市(かいし)は師がすぐに結婚すると勘違いし、心に苦い思いがこみ上げた。
帝旭(ていそく)は突然医官院を訪れ、医官たちを不安にさせた。彼は最近の医療記録を調べていたが、その時、門の外で騒ぎが起こった。癒安宮の侍女が、緹蘭の飼っているウサギの小乖が病気になったと報告に来たのだ。帝旭(ていそく)はすぐに穆徳慶に小乖の世話を命じ、昨日の医療記録を尋ねた。実際は緹蘭の怪我の具合が気になっていたのだが、頑なに認めようとしなかった。
雷鳴と共に激しい雨が降り出した。師の結婚話で傷ついた方海市(かいし)は雨の中にいた。方諸は彼女を昭明宮に引き入れ、濡れた服を拭きながら、若さで健康を疎かにしないようにと注意した。方海市(かいし)は師の言葉が相変わらず老成しているとこぼしたが、実際には二人の年齢はそれほど離れていない。方諸は方海市(かいし)に生姜湯を用意して体を温めた。方海市(かいし)の悲しそうな様子を見て、方諸は彼女の調子がおかしいことに気付いた。時間が遅くなり、宮門が閉まる頃だと考え、方諸は方海市(かいし)に宮中に泊まるように言った。しかし、方海市(かいし)は一人で霽風館に戻り、悲しみに暮れた。
翌朝、交代後の方卓英(ほうたくえい)はすぐに霽風館へ方海市(かいし)を探しに行き、彼女が一晩で随分と大人びたように感じた。落ち込んでいる方海市を慰めるため、方卓英(ほうたくえい)は以前柘榴(しゃりゅう)からもらった餅を差し出した。方海市は方卓英(ほうたくえい)が綾錦司に行ったのだと察し、一緒に宮中へ行き帝旭(ていそく)に会うことに決めたが、帝旭(ていそく)を暗殺しないと約束した。
穆徳慶は帝旭(ていそく)に小乖の容態が良くなったと報告し、帝旭(ていそく)は喜び、ご褒美に笑顔の絵を描いて穆徳慶に渡した。方海市は帝旭(ていそく)に謁見を求め、帝旭(ていそく)は方諸と鞠典衣の結婚を賜るつもりだと話し、方海市に説得を頼んだ。これは方海市にとって辛いことだった。そこで、方海市は自ら黄泉関への赴任を誌願した。帝旭(ていそく)は黄泉関の過酷な環境を詳しく説明し、本当に覚悟しているのかと尋ねた。方海市は黄泉関が国にとって重要な場所であることを指摘し、新兵と共に赴任したいと申し出た。
帝旭(ていそく)は方海市の決意を称賛し、方諸の婚礼後に赴任することを許可した。方海市は新兵と共に赴任することを主張し、それが適切であり、師の婚礼を欠席せずに済むと述べた。帝旭は彼女の願いを聞き入れた。
小乖は再び元気をなくし、容態が急変した。帝旭は柘榴(しゃりゅう)がウサギを抱いている姿を思い出し、彼女を金城宮に呼び、小乖の世話の仕方を尋ね、自分のウサギも連れてくるように命じた。
方諸は方海市に昭明宮への引っ越しを告げ、方海市は間もなく黄泉関へ赴任することを明かした。方諸はこの知らせに驚き、黄泉関への赴任は容易ではないからだ。方海市は自分の決意を説明し、去り際に立ち止まり、師に背を向けて、婚礼には出席できないと告げた。方諸は方海市の異様な様子の理由を理解し始めた。
荷物を整理していると、方海市は師がかつて励ましのために贈ってくれた玉の扳指を見つけ、物思いにふけり、心が重くなった。方卓英(ほうたくえい)が来て慰めようとしたが、方海市は言葉では明るく振る舞っていても、心の痛みは誰にも分からなかった。方卓英(ほうたくえい)は方海市が黄泉関へ行くことを心配し、方諸に相談に行ったが、追い返されてしまった。落ち込んだ方卓英(ほうたくえい)は綾錦司の屋根に上がり、静かに柘榴(しゃりゅう)を見つめていた。
第12話あらすじとネタバレ
海市(かいし)は黄泉営に入り、厳しい訓練の日々を送っていた。以前からの怪我も癒えぬまま、新たな傷を負ってしまう。哨子は方諸に海市(かいし)の状況を報告し、休ませるよう進言するが、方諸は内心心配しながらも、軍に入った以上当然のことだと平静を装う。
その後、方卓英(ほうたくえい)が営を訪れ、師への恩を忘れ、将来師に尽くす責任を放棄したのかと海市(かいし)を叱責する。海市(かいし)は方鑑明(ほうかんめい)は実の父ではないし、方諸への気持ちはただの師弟愛ではないと仮論する。ある夜、夢の中で方諸に特別な想いを伝える海市(かいし)。目が覚めると枕元に粥が置いてあり、誰が持って来たのか不思議に思う。
張大人は海市(かいし)の怪我を気遣うが、薬と休息で既に回復したと聞き安心する。そして、翌日、軍は北上して黄泉関へ向かうこと、今日は家に帰って家族に別れを告げるようにと告げる。張大人は、天啓城と黄泉関は遠く離れているため、次にいつ会えるか分からないので、霽風館に戻り、方諸と方卓英(ほうたくえい)に別れを告げるよう勧める。
熟慮の末、海市は霽風館へ戻る。方諸は海市に一緒に碁を打とうと持ちかけ、海市は師の真意を測りかねる。碁を打ちながら、海市は再び方諸に想いを伝えるが、方諸は動揺し、何も答えることができない。
一方、宮中では、穆徳慶が柘榴(しゃりゅう)の腕前を褒め、帝旭(ていそく)は兎ですらずる賢くなったとぼやく。李御医が謁見を求めて来た時、帝旭(ていそく)は面倒くさがるが、穆徳慶に促され仕方なく会う。李御医は、緹蘭の手の傷は薬で治るどころか、お守りを彫り続けて悪化していると報告する。帝旭(ていそく)は表面上は冷淡だが、内心は心配し、すぐに南宮へ緹蘭の様子を見に行く。緹蘭の傷ついた手を見て、心を痛めながらも冷酷な態度を装う帝旭(ていそく)。気遣いの言葉をかけようとした時、緹蘭は誤って帝旭(ていそく)の手を傷つけてしまう。帝旭(ていそく)は激怒し、侍女二人を杖刑に処すよう命じる。
緹蘭は侍女たちの助命を嘆願し、帝旭に贈り物があると告げる。それは、自ら彫った龍尾神のお守りだった。大徵に来たばかりの頃は恨みに満ちていたが、今は帝旭の苦しみを理解し、このお守りが帝旭の痛みを少しでも和らげてくれることを願うと伝える。帝旭は贈り物を受け取らなかったものの、三万個のお守りの命令を取り消し、穆徳慶に緹蘭と侍女たちを癒安宮へ戻すよう指示する。
施内宮から海市と方卓英(ほうたくえい)に錦服が届けられる。方卓英(ほうたくえい)は柘榴(しゃりゅう)が刺繍した錦服を気に入り、柘榴(しゃりゅう)を気遣う素振りを見せる。それを見て、海市は咳払いをして注意を促す。公務で忙しい方諸は、その夜帰ることができず、海市に自分の部屋で寝るように言う。海市は部屋に残る師の気配を感じながら夜を過ごす。
方諸は自身の事情により海市の気持ちに応えることができない。かつて国難を救うため、帝旭と共に戦った時のことを思い出す。焦って包囲網を縮めたために紫簪(しさん)を失い、帝旭も命を落としかけた。事態の収拾と軍の士気を維持するため、帝旭の柏奚となり、すべての苦痛と災厄を代わりに背負うことを選んだ。後悔はしていないが、海市には申し訳ないと思っている。
出発の日、方諸は自ら海市に戦袍を著せる。別れ際、海市は扳指を方諸に返す。宮中では、帝旭が紫簪(しさん)の肖像画に語りかけ、孤独を吐露する。緹蘭は帝旭の寂しさに気づき、自分と紫簪(しさん)の違いを痛感する。帝旭は紫簪(しさん)が自分の強さを願っていたことを知っているが、それを誰にも分かち合えない。そして、方諸は帝旭の代理として行祃儀を執り行い、黄泉関へ向かう黄泉営の兵士たちを見送る。
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