概要/あらすじ
『千門(せんもん)』は、中国の伝統武侠小説です。江湖(こうこ)八門の一つである千門(せんもん)を中心に、他の門派との複雑な抗争と陰謀を描いています。主人公の高陽(こうよう)を軸に、沈万三(しんばんざん)の子孫との物語、そして彼らが『永楽大典(えいらくだいてん)』を巡る争奪戦を繰り広げます。
江湖(こうこ)八門とは、千門(せんもん)、盗門(盗賊)、索命門(暗殺)、蘭花門(情報操作・色仕掛け)、神調門(呪術)、蠱門(毒術)、紅手絹(からくり・罠)、機關門(機械仕掛け)から成り、それぞれ独自の技芸を持ちます。
千門(せんもん)は騙し術に長け、盗門は窃盗、索命門は生死を操り、蘭花門は感情を巧みに利用し、神調門は神秘的な力、蠱門は毒虫を操り、紅手絹は罠や仕掛け、機關門は様々な機械装置を使いこなします。これらの門派間の争いと因縁を通して、江湖(こうこ)の複雑さと危険さを描き出しています。高陽は争いの中で成長し、複雑で変化し続ける人間の本質を浮き彫りにしていきます。武侠と江湖(こうこ)の要素が融合した独特なスタイルで、伝統武侠小説の愛好家にぴったりの作品です。
物語の舞台は、伝説に彩られた江湖(こうこ)世界。作中に登場する千術、盗法、機關、秘技などは実際に存在する技術ですが、作者は私利私欲のためにこれらの技術を用いることを推奨していません。高陽の視点を通して、千局(せんきょく:策略・駆け引き)における最大の変化は人心であることを示し、江湖(こうこ)における知略と計策の重要性を強調しています。
主要人物には、高陽の他に、江湖(こうこ)の歴史において重要な役割を果たした沈大、宗二、燕子李三、蠱王薛四、大刀王五などが登場します。彼らは物語の中で重要な役割を担い、ストーリーを展開させていきます。
『千門(せんもん)』の結末はオープンエンドで、明確な結末は描かれていません。作中では、主人公の陳九(ちんきゅう)がカジノで様々な試練や陰謀を経験し、決勝戦に進出、対戦相手は董天頌(とうてんしょう)です。決勝戦前、梅姐(ばいじえ)は陳九に董天頌にわざと負けるよう提案します。陳九が背後の黒幕である龍震山(りゅうしんざん)に敵わないためです。梅姐は、龍震山の背景は非常に深く、燕門(えんもん)の人間でさえ太刀打ちできないと説明します。しかし、物語はここで終わり、決勝戦の結果や陳九の運命については描かれていません。
それでも、『千門(せんもん)』はカジノにおける様々な陰謀や戦略、複雑な環境での小人物の生存のための知恵と闘争を描いた、ストーリー豊かな作品です。カジノでの明暗の争いを通して、人性の複雑さや多面性を描き出しています。
作者について
方白羽(ほうはくう)、本名卓平(たくへい)。四川省宜賓市出身。山東大学電子工程係卒業後、中国人民解放軍装備部酒泉衛星発射センター(東風航天城)の電子技師として、通信、セキュリティ、衛星遠隔測定追跡などの業務に従事。中国の有人宇宙船の打ち上げにも貢献し、その後、西昌衛星発射センター宜賓衛星観測ステーションに転属。2003年に中佐で退役し、現在は四川省徳陽市に在住、作家活動に専念。
作品情報
ジャンル:伝統武侠
あらすじ:千門(せんもん)の起源は古代の帝王・禹(う)の時代まで遡ると言われています。千門(せんもん)の秘技は世間に広く知られることはありませんでしたが、代々受け継がれ、天下の情勢に影響を与え、左右してきました。千門(せんもん)の継承者たちは、乱世には立ち上がり、王朝交代の立役者となり、太平の世には山林に隠遁し、時が来れば再び現れ、その知略と策略で、中国数千年の歴史に伝説を刻んできました。千門(せんもん)の新たな主、公子雲襄(ユン・シャン)/駱文佳(ルオ·ウェンジア)は、弱々しい書生の姿で商界の変転に立ち向かいます。商戦には刀光剣影はありませんが、よりスリリングで、生死を賭けた計画と策略の応酬の中で、千門(せんもん)の公子の理想とは一体何なのでしょうか?
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