武周時代、栄華を極める神都洛陽。異なる身分の三人の運命が、街を揺るがす陰謀の中で交錯するサスペンス時代劇「風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~」
物語は、底辺で生きる高秉燭(こうへいしょく)が思いがけず事件に巻き込まれ、容疑者として追われるところから始まります。類まれな知恵と勇気で身の潔白を証明しようと奔走する彼は、父の毒殺をきっかけに復讐の道を歩む工部尚書の次男、百里弘毅(ひゃくりこうき)と出会います。互いに疑いながらも、共に真実を追い求める中で固い絆で結ばれていく二人。さらに、事件捜査のため高秉燭(こうへいしょく)に近づく内衛府のエリート武官、武思月(ぶしげつ)も加わり、三人の運命は複雑に絡み合っていきます。
彼らが追う事件の裏には、「春秋道(しゅんじゅうどう)」という謎の組織が暗躍していました。朝廷転覆を企む春秋道(しゅんじゅうどう)は、密告制度を利用して洛陽に混乱をもたらそうと画策していたのです。高秉燭(こうへいしょく)、百里弘毅(ひゃくりこうき)、武思月(ぶしげつ)は、幾重にも仕掛けられた罠や困難に立ち向かい、神都の平和を守るため、命がけの戦いを繰り広げます。
陰謀渦巻く物語の結末は、それぞれのキャラクターに深い爪痕を残します。武思月(ぶしげつ)は兄を守るため、非業の死を遂げます。黒幕である兄、武攸決(ぶゆうけつ)は妹の死に心を砕かれ、狂気に陥り幽閉される運命に。武攸決(ぶゆうけつ)の駒として利用されていた百里寬仁は処刑。数々の苦難を乗り越えた高秉燭(こうへいしょく)は功績を認められ官職を与えられますが、愛する者を失った悲しみから、情愛を断ち生きることを選びます。真実を暴いた百里弘毅(ひゃくりこうき)は工部侍郎に任命されますが、大きな傷を負った彼は、妻と共に神都を離れ静かに暮らす道を選びます。武思月(ぶしげつ)を誤って殺めてしまった柳十郎は、死罪を免れ父と共に旅に出ます。そして、陰謀の渦中で生き残った東川(とうせん)王王は、最終的な勝者となります。
それぞれの選択、それぞれの結末。登場人物たちの運命が交錯する重厚な物語が、あなたの心を掴んで離さないでしょう。
第1話あらすじとネタバレ
聖人即位まもない神都は、未だ波乱含み。権力基盤を固めるため、聖人は身分に関わらず民衆からの密告を奨励し、都への情報提供を促した。これにより、一時は密告が横行したが、大慶年間の酷吏の失脚と共に衰退し、誰もが容易に密告しなくなっていた。しかし太成三年、一人の密告者の出現により、神都の静寂は破られた。
薄暗い部屋の中、棺桶が開き、朝日が差し込む中、高秉燭(こうへいしょく)は棺桶から起き上がり、新しい一日が始まった。
南市の大通りは人々で賑わい、商人が集まり、各地から様々な品物が取引されていた。高秉燭(こうへいしょく)は食べ物を口にしながら、一人の男を追いかけていた。武思月(ぶしげつ)は屋台から高秉燭(こうへいしょく)の姿を見つけ、永川郡主(えいせんぐんしゅ)李鹿(りろく)に人混みで迷子にならないよう、彼に付いていくよう指示した。久しぶりの外出に李鹿(りろく)は周囲の物に興味津々で、武思月(ぶしげつ)の堅苦しさをたしなめて、一緒に見て回ろうと誘った。
ある料理屋では、男が黒魚の最高の調理法を皆に披露していた。そこに百裏弘毅が現れ、彼の提案した調理法は皆の賞賛を浴びた。百裏弘毅がここに来たのは、林仲(りんちゅう)に呼ばれたためだった。林仲(りんちゅう)は人混みに紛れて百裏弘毅を呼び寄せ、娘と共に奁山から密告に来たこと、護衛の兵士は既にいないことを告げた。事態の深刻さを悟った百裏弘毅は、林仲(りんちゅう)が自分に会いに来るべきではなかったと非難する間もなく、刺客が現れ林仲(りんちゅう)親子を襲撃した。百裏弘毅はとっさに熱々の魚汁で刺客を撃退し、林仲(りんちゅう)は娘を連れて逃げ出した。混乱の中、更に多くの刺客が現れ、密かに様子を窺っていた高秉燭(こうへいしょく)も動き出した。刺客が林仲(りんちゅう)親子に危害を加えようとした時、武思月(ぶしげつ)は護衛に李鹿(りろく)を守るよう命じ、自ら親子を救出した。
騒動の中、李鹿(りろく)を襲おうとする者もいたが、武思月(ぶしげつ)の機転と官兵の介入により事態は収拾された。刺客は自害しようとしたが、武思月(ぶしげつ)に阻止され捕縛された。林仲(りんちゅう)親子は路地に逃げ込んだが、その後不幸な最期を遂げた。
太初宮では、武思月(ぶしげつ)は武攸決(ぶゆうけつ)と共に太子妃杜氏に謁見した。杜氏は李鹿(りろく)を抱きしめ慰めながら、武攸決(ぶゆうけつ)に李鹿(りろく)の外出が何故知られたのかと鋭く問いただした。武思月(ぶしげつ)は、朝廷に関わらない李鹿(りろく)が何故暗殺の標的にされたのか疑問を呈しようとしたが、兄の武攸決(ぶゆうけつ)に今はその時ではないと製止された。武攸決(ぶゆうけつ)は、彼らの任務は聖人と皇族の安全を守ることだと述べた。
夜、百裏弘毅の父百裏延は彼を見つけ、いつも外をうろついているのは婚約から逃げるためだと叱責した。しかし百裏弘毅は気に留めず、父の言葉を無視して立ち去った。
深夜、高秉燭(こうへいしょく)は牢獄に忍び込み、囚人を処刑するよう命じられたと告げた。囚人は死ぬ間際に、密告者は既に死に、任務は完瞭したと呟いた。立ち去ろうとした高秉燭(こうへいしょく)だったが、密告の内容を尋ねた。囚人は高秉燭(こうへいしょく)が仲間ではないと気づき、自分がまだ生きていることに驚愕した。高秉燭(こうへいしょく)は急所を外した三か所の刺し傷を見せ、また来ると約束して立ち去った。しかし、高秉燭(こうへいしょく)が去った後、囚人は別の刺客に殺害された。
棺桶屋で、高秉燭(こうへいしょく)は囚人の言葉「密告者は既に死に、大事は成る」を仮芻していた。林仲(りんちゅう)の娘の死と、囚人の言葉が重なり、何かを悟った様子だった。死体を調べると、全ての死体の胸に暗器の痕があることに気づき、考えを巡らせた。
翌日、高秉燭(こうへいしょく)は百裏弘毅を訪ね、羊湯の話を持ち出しながら奁山のことをそれとなく尋ねた。百裏弘毅はすぐに高秉燭(こうへいしょく)の意図を理解し、林仲(りんちゅう)親子の死を知った。高秉燭(こうへいしょく)は詳しい死因は語らず、また来ると告げて立ち去った。
武思月(ぶしげつ)は事件の捜査中、死体運搬人に死者の所持品を持ち去ったか尋ねた。昨日捕らえた囚人が既に死んでいると聞き、武思月(ぶしげつ)は驚き、大理寺を殺人罪で糾弾した。その時、高秉燭(こうへいしょく)が現れ、自分がやったことだと罪を認めた。
第2話あらすじとネタバレ
百裏弘毅は父娘の遺体を確認するため大理寺へ向かうが、大理寺卿の高昇(こうしょう)に拒絶され、無情にも追い出される。武思月(ぶしげつ)は高秉燭(こうへいしょく)に自首の理由を問いただすと、高秉燭(こうへいしょく)は「法網恢恢疎にして漏らさず」と答える。そこに高昇(こうしょう)が慌てて現れ、武思月(ぶしげつ)に大理寺で捜査する資格はないと叱責する。聖人は高昇(こうしょう)と武思月(ぶしげつ)を召し出し、高昇(こうしょう)は真相究明のため時間を求め、聖人と永川郡主(えいせんぐんしゅ)への説明責任を果たすと申し出る。密告者を狙った連続殺人の真相を知った聖人は激怒し、近年密告者を見かけないのは既に抹殺されていたからだと悟り、一同恐怖に慄く。
聖人は武思月(ぶしげつ)だけを残し、真相究明を命じ、芙蓉令を与えて通行の自由を許可し、一ヶ月以内の解決を厳命する。武思月(ぶしげつ)は聖旨を受け、まずは大理寺に拘留されている高秉燭(こうへいしょく)の尋問を計画する。
一方、百裏延は一族の繁栄を願い、百裏弘毅に早く結婚して子孫を残すよう促す。しかし、百裏弘毅は柳(りゅう)家の娘との結婚に仮対し、百裏延が出世のためにこの縁談を進めたと非難し、離縁状を書くと言い放つ。激怒した百裏延は百裏弘毅を平手打ちする。
武思月(ぶしげつ)は高秉燭(こうへいしょく)の情報を聯防で調べるため、規定に従い目隠しをして入る。韓冬青(かんとうせい)に案内され、万象殿で高秉燭(こうへいしょく)について尋ねられる。武思月(ぶしげつ)は、高秉燭(こうへいしょく)がただの検視官であれば聯防が関心を示すはずがないと気づく。聯防の責任者である公子楚(こうしそ)は韓冬青(かんとうせい)に武思月(ぶしげつ)への全面協力を指示し、彼女の真意を探ろうとする。公子楚(こうしそ)は常に鉄仮面を被っており、素顔を知る者は少ない。
大理寺では高秉燭(こうへいしょく)に厳しい拷問が加えられ、獄中の重犯を殺害した理由と林仲(りんちゅう)父娘に会ったかどうかを問いただされる。高秉燭(こうへいしょく)は復讐のためだと認め、密告者にも会ったと答える。しかし、高昇(こうしょう)が密告者の言葉を聞こうとした矢先、聖旨が届き高秉燭(こうへいしょく)は召還される。その時、陳闕(ちんけつ)が護送中の兵士を斬り、高秉燭(こうへいしょく)を連れ去る。高秉燭(こうへいしょく)はこれを予期しており、自首の目的は陳闕(ちんけつ)をおびき出すことだった。
二人は馬車内で激しい戦闘を繰り広げ、陳闕(ちんけつ)は高秉燭(こうへいしょく)を匕首で刺すが、高秉燭(こうへいしょく)も陳闕(ちんけつ)の腕を折る重傷を負わせる。瀕死の陳闕(ちんけつ)は黒幕の存在をほのめかした直後、馬車外から刃物が突き刺さり絶命する。高秉燭(こうへいしょく)が馬車から降りると、襲撃者の姿はなく、氷の刃が馬車に突き刺さっていた。この凶器は過去の事件現場を思い起こさせ、高秉燭(こうへいしょく)は真相に近づいていると感じる。
大理寺は直ちに高秉燭(こうへいしょく)の捜索を開始する。公子楚(こうしそ)は高秉燭(こうへいしょく)が街に詳しいと推測し、大理寺と内衛が有利とはいえ、捕縛は容易ではないと考える。韓冬青(かんとうせい)は、大理寺が全ての出口を封鎖すれば、高秉燭(こうへいしょく)がどれだけ街に詳しくても逃げられないと考える。
窈娘(ようじょう)の賭場は賑わっており、内衛と大理寺が逃亡犯を探しに来た際、窈娘(ようじょう)は冷静に自分の部屋を捜索させる。彼らが去った後、窈娘(ようじょう)は隠し部屋から負傷した高秉燭(こうへいしょく)を出し、手当てをする。
窈娘(ようじょう)の助けで髭を剃り、別人のように変装した高秉燭(こうへいしょく)は、窈娘(ようじょう)の製止を振り切って出て行く。街中が高秉燭(こうへいしょく)の捜索で騒然とする中、窈娘(ようじょう)は心配しながらも見送るしかない。
百裏弘毅は魯班鎖を弄びながら、一族の運命について考える。百裏延が柳(りゅう)家との縁談を進めたのは、一族の将来を案じ、強力な後ろ盾を得るためだと理解する。
神都には不良井(ふりょうせい)と呼ばれる場所があり、罪人の子孫など、社会の底辺で暮らす人々が集まっている。高秉燭(こうへいしょく)は不良井(ふりょうせい)に戻り、醜翁に奇妙な氷の刃を鑑定してもらう。醜翁は刃が黄銅製で、奁山の百裏延が経営する鋳造所で作られたものだと断定する。それを聞いた高秉燭(こうへいしょく)はすぐさま不良井(ふりょうせい)を後にする。その時、武思月(ぶしげつ)も不良井(ふりょうせい)の外に辿り著いていた。
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