概要/あらすじ
「九州・朱顔記」は、壮大な架空世界「九州」を舞台にした物語です。晁(ちょう)高帝による九州統一という大時代を背景に、苛烈な運命に翻弄されながらも、美と自由を追い求める人々の姿を描いています。戦争や権力争いではなく、変化と混乱の時代の中で、人々がどのように生きがいと自由を見出そうとするのか、その強い意志と葛藤に焦点を当てています。
物語の中心人物は、夜北(やほく)の望漠部族長の娘である七海蕊(しつかい・ずい)、通称・朱顔公主。彼女は翼無憂(よく・むゆう)という羽族(うぞく)の貴族と愛し合っていましたが、復讐と大義のために彧修明(いく・しゅうめい)に嫁ぐことになります。翼無憂(よく・むゆう)は愛する七海蕊(しつかい・ずい)を取り戻すため、彧修明(いく・しゅうめい)と幾度となく生死を賭けた戦いを繰り広げますが、その想いは叶いません。七海蕊(しつかい・ずい)の異母姉である七海憐、通称・青蘅(せいこう)公主は、夜北(やほく)の民のために尽力し、晁(ちょう)朝の越州大都護・諸嬰(しょ・えい)の妻となります。一方、天真爛漫な七海蕊(しつかい・ずい)は翼無憂(よく・むゆう)を慕っていましたが、政略結婚を強いられ、自ら命を絶ってしまいます。天下と美人を愛した彧修明(いく・しゅうめい)もまた、最後に運命から逃れることはできませんでした。
登場人物紹介:
- 朱顔公主: 夜北(やほく)・望漠部族長、七海震宇(しつかい・しんう)の末娘。
- 七海震宇(しつかい・しんう): 晁(ちょう)朝初期、夜北(やほく)の有力部族・望漠部の族長。夜北(やほく)七部の中でも大きな影響力を持つ。
- 青蘅(せいこう)公主: 七海震宇(しつかい・しんう)の長女、七海蕊(しつかい・ずい)の異母姉。夜北(やほく)の民のために尽力し、晁(ちょう)帝から「青蘅(せいこう)公主」の称号を授かり、後に越州大都護・諸嬰(しょ・えい)の妻となる。
- 翼無憂(よく・むゆう): 夜北(やほく)を放浪する羽族(うぞく)の貴族。
- 晁(ちょう)高帝: 晁(ちょう)朝の開国君主。数々の戦いを経て天下を統一し、国土を九州に分け、都護府を設置した。「九州」の名の由来となる。
- 界海天(かい・てん): 晁(ちょう)朝の欽天監(きんてんかん)博士。高帝に二十年仕え、最も信頼された側近。夜北(やほく)征服への懸念を表明したため、高帝の怒りを買い処刑される。
- 謝雨安: 晁(ちょう)朝の藍衣軍(らんいぐん)統帥、衛将軍。
- 諸嬰(しょ・えい): 晁(ちょう)朝の武将。界海天(かい・てん)の息子。父の死後、「諸」姓を賜り、後に越州大都護に封じられる。
世界観:
- 九州: 架空の世界。晁(ちょう)高帝によって九つの州に分けられたことからこの名がついた。
- 晁(ちょう)朝: 東陸の華族が建国した王朝。物語の舞台となる晁(ちょう)朝初期には、九州はまだ一つの大陸であった。
- 夜北(やほく)七部: 夜北(やほく)高原に存在する七つの遊牧部族。望漠、黒水、図顔、呼嵐、素巾、狄別、熱河の七部からなる。
- 藍衣・鬼弓: 晁朝の精鋭騎兵部隊。藍衣軍(らんいぐん)の中でも特に精鋭部隊が鬼弓である。
- 夜沼(やしょう): 九州で最も危険な場所の一つ。深い霧に覆われた沼地と森が広がり、多くの魔物が棲む。
この物語は、愛と憎しみ、希望と絶望が交錯する中で、力強く生きる人々の姿を描いた叙事詩です。九州という壮大な世界観の中で、それぞれの運命に立ち向かう彼らの姿に、きっと心を奪われることでしょう。
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