第53話あらすじとネタバレ
瑞安(ずいあん)は媚娘(びじょう)の帰りを信じ続け、宮中の女官たちの冷嘲熱諷にも耐えていました。「塵になっても媚娘(びじょう)は戻らない」という言葉は、彼の心を深く傷つけました。落胆と悲しみの中、瑞安(ずいあん)は媚娘(びじょう)がかつて住んでいた庭を訪れ、彼女が刺繍した鴛鴦図を握りしめていました。しかし、宦官に見つかり、鴛鴦図を奪われてしまいます。抵抗した瑞安(ずいあん)は、酷く殴打されてしまいました。
歳月は流れ、皇帝が長安を出て親徴してから数年が経ち、凱旋の日を迎えました。媚娘(びじょう)のいない日々の中、徐恵(じ・ょけい)は久しい静けさを感じていました。文娘(ぶんじょう)を殺めた燭台を手に取り、全ての苦しみと不完全なものが今日で終わると考えていました。皇帝の帰還は、文娘(ぶんじょう)の犠牲に意味があったのだと、徐恵(じ・ょけい)は思いました。皇帝の馬車が長安まであと二十裏と知ると、徐恵(じ・ょけい)は嬉し涙を流しました。
しかし、皇帝の帰還は順調ではありませんでした。出迎えの道中、皇帝は突然意識を失います。皇太子は太医たちを叱責し、なぜ無事だった父が突然倒れたのかと問い詰めました。徐恵(じ・ょけい)は皇帝の体調不良を承知していましたが、皇帝の威厳を保ち、仮逆の芽を摘むため、病を隠していたのです。意識を取り戻した皇帝は徐恵(じ・ょけい)の対応に満足し、引き続き後宮を任せ、皇太子には自分の批閱した奏疎を確認するように命じました。
宮中は皇帝が不在の間も、以前より良く治まっていました。皇帝は徐恵(じ・ょけい)が瑠璃宴で著ていたのと同じ服を著ていることに気づき、あの時、媚娘(びじょう)のおかげで東瀛の碁士に勝てたことを思い出しました。徐恵は心中穏やかではありませんでしたが、表情には出しませんでした。今は自分だけが皇帝の傍にいるという優越感に浸っていました。
一方、媚娘(びじょう)はひそかに宮中に戻り、瑞安(ずいあん)の痛ましい傷跡を目にします。媚娘のいない間、瑞安(ずいあん)は多くの苦しみを味わっていたのです。瑞安(ずいあん)は媚娘の帰りを信じ続け、辛い日々の中でも、この場所を大切に守っていました。宮外での出来事については、誰にも、たとえ信頼できる人物に見えても、口外しないと決めていました。
媚娘は、なぜ瑞安が今では賢妃となっている徐恵に助けを求めなかったのか疑問に思います。瑞安は、今の徐恵は昔とは別人であり、韋妃よりも厳しい治世を行っていると説明します。居眠りをしただけで命を落とす者もいると聞き、媚娘は今の徐恵に恐怖を感じました。
皇帝が宮中に戻り、最初に召見したのは徐恵でした。女官たちはこぞって彼女を称賛します。喜び勇んで甘露殿(かんろでん)に向かった徐恵は、そこで皇帝と共に帰還した媚娘と再会します。姉妹の再会は喜ばしいはずですが、徐恵の心は複雑な感情で揺れていました。皇帝は皇太子の批閱した奏疎を見て、その政治手腕を評価しつつも、優しすぎる点を指摘し、時には厳しさも必要だと諭しました。
宮中に戻った媚娘は、皆が徐恵を恐れていることを知ります。媚娘は、徐恵も自分も、入宮当時とは変わってしまったことを実感しました。噂は真実であり、徐恵の宮中での生活を物語っていました。二人は多くの変化を経験し、もはや入宮したばかりの少女ではありませんでした。
第54話あらすじとネタバレ
離宮後、武媚娘(ぶ・びじょう)は徐恵(じ・ょけい)と瑞安(ずいあん)だけに当時の出来事を語った。瑞安(ずいあん)を信頼してはいるものの、徐恵(じ・ょけい)は彼の若さゆえの軽率さを指摘し、秘密が漏れる可能性を危惧した。媚娘(びじょう)もその懸念を理解していた。瑞安(ずいあん)は文娘(ぶんじょう)の死因究明に尽力しており、かつて媚娘(びじょう)が凶器の可能性として燭台に言及したことから、価た燭台を見かける度に注意を払い、文娘(ぶんじょう)の無念を晴らそうとしていた。
近頃、媚娘(びじょう)は徐恵(じ・ょけい)を訪ねた。賢妃となった徐恵(じ・ょけい)は、宮中の孤独と苦悩を媚娘(びじょう)に吐露した。真の友が少ない宮廷で、媚娘(びじょう)は徐恵(じ・ょけい)のような姉妹を失いたくなかった。自身に悪意を抱く者がいることも承知していたが、瑞安(ずいあん)には過度に心配しないよう伝えた。
太子・衝児はこっそりと媚娘の住まいを窺っていた。北方の戦について、当初は大勝利だと考えていたが、長孫無忌(ちょうそんむき)からは辛勝であり、敵を完全に打ち破れておらず、更に皇帝が毒矢を受けたことを聞かされた。更に不可解なのは、武媚娘(ぶ・びじょう)が再び宮中に戻ってきたことだ。皇帝の詔書には、媚娘が宮外で皇帝の安全を守ったと記されていたが、腑に落ちない。衝児は皇帝が媚娘を偏愛し、妃に立てる考えを抱いているのではないかと危惧していた。長孫無忌(ちょうそんむき)は静観するしかなかった。
徐恵(じ・ょけい)にとって、武媚娘(ぶ・びじょう)は常に意識せざるを得ない存在だった。長年、徐恵は後廷を文徳(ぶんとく)皇后にも劣らず見事に管理してきた。媚娘の帰還に不安を覚え、皇帝の心変わりを恐れていた。錦楽宮の庭園を散策中、皇帝は周囲の変化に気づき、徐恵の後廷管理の苦労を理解し、媚娘にも手伝わせる意向を示した。しかし、徐恵は別の思惑を抱いていた。彼女は宮女に清寧宮(せいねいきゅう)へ行き、瑞安(ずいあん)の筆跡を集めさせ、偽の手紙で媚娘を陥れようとしていた。
ある時、媚娘は誤って鋳銭用の型に自分の爪痕を残してしまった。自身の不注意を悔やんだが、皇帝は咎めず、作り直せばよいと述べた。最近、皇帝は高陽公主と辯機(べんき)和尚の噂を耳にしていた。高陽公主も結婚適齢期を迎えたため、房遺愛(ぼういあい)との結婚を決めた。高陽公主は太子に頼み込み、結婚を回避しようとしたが、聖旨は覆らなかった。
瑞安(ずいあん)は媚娘に、昨夜錦楽宮の阿離(あり)という名の宮女が杖刑で亡くなったことを伝えた。媚娘は錦楽宮で徐恵がその宮女の名を尋ねていたのを思い出した。高陽公主は房遺愛(ぼういあい)との結婚を拒み、浄初池に身を投げようとした。媚娘は周囲の宦官や宮女を下がらせ、公主を慰め、最終的に結婚を受け入れさせた。高陽公主は媚娘の特別な存在感を感じたが、結婚後は会う機会が減ってしまうことを惜しんだ。
朝廷の臣下たちは宮中から密書を受け取った。それは媚娘が従軍したという内容だった。長孫無忌(ちょうそんむき)は武媚娘(ぶ・びじょう)を宮中に留めておくのは危険だと考え、何らかの変事が起こることを懸念した。
第55話あらすじとネタバレ
宮廷の陰謀
長孫無忌(ちょうそんむき)は武媚娘(ぶ・びじょう)に深い警戒心を抱き、彼女が宮中に留まり続ければ必ず大きな変事が起きると考えていました。他の大臣たちも彼女の勢力拡大に気づき、中には皇帝に上奏し、朝政幹渉を理由に厳罰を求めるべきだと提案する者もいました。しかし、長孫無忌(ちょうそんむき)は「朝政幹渉」だけでは皇帝が武媚娘(ぶ・びじょう)を処分する決断を下すには不十分だと理解していました。事態を国家の安定(あんてい)を脅かすレベルにまで引き上げなければ、皇帝の決意を揺るがすことはできないと考えたのです。そこで、彼は女主武氏に関する予言を再び利用することを決意します。
ちょうどその時、大相師袁天罡(えんてんがん)が弟子の李淳風の墓参りのため長安にやって来ました。長孫無忌(ちょうそんむき)はこの機会を利用し、袁天罡(えんてんがん)を宮中に招き、皇帝のために占ってもらうよう依頼します。袁天罡(えんてんがん)は内心葛藤しながらも、弟子の誼に報いるため、長孫無忌(ちょうそんむき)の依頼を受け入れ、入宮することに同意します。
一方、宮中も波乱に満ちていました。媚娘(びじょう)は瑞安(ずいあん)に遼東人参を徐慧(じょ・けい)に届けるよう頼みます。贈り物を受け取った徐慧(じょ・けい)は、瑞安(ずいあん)が持っていた文娘(ぶんじょう)の手作りのハンカチを発見します。このハンカチは、二人の関係についての宮中の噂が真実であることを示すものでした。それでも徐慧(じょ・けい)は瑞安(ずいあん)を罰することなく、逆に一巻の書物を託し、文娘(ぶんじょう)の死の真相の手がかりを見つけるように頼みます。瑞安(ずいあん)はその書物に戸惑いますが、徐慧(じょ・けい)の説明で、それが長年にわたる文娘(ぶんじょう)事件の捜査記録であることを理解します。瑞安(ずいあん)は感謝するとともに、真犯人を見つけ出す任務を負うことになります。
長孫無忌(ちょうそんむき)が袁天罡(えんてんがん)を連れて太極殿で皇帝に謁見すると、皇帝はなぜ一人の女性をここまで追い詰めるのかと不満を示します。長孫無忌(ちょうそんむき)は、武媚娘(ぶ・びじょう)が皇太子の選定に深く関与しただけでなく、大唐の運命にも影響を与えていると強調します。さらに、彼女が皇帝に撤兵を説得したことも、普通の女性にはできないことだと主張します。長孫無忌の強い意誌に、皇帝は占いを許可し、結果に従って判断を下すと約束します。この事態に皇太子は不安を覚え、急いで媚娘(びじょう)のもとへ相談に向かいます。
瑞安(ずいあん)は文娘(ぶんじょう)の死の真相を探る中で、徐慧(じょ・けい)を指し示す重要な証拠、文娘(ぶんじょう)の文字が刻まれた燭台を偶然発見します。この発見に驚き、徐慧(じょ・けい)と文娘(ぶんじょう)の死の関係を疑い始めます。しかし、燭台だけでは証拠不十分であり、更なる証拠が必要でした。その時、皇太子が甘露殿(かんろでん)での新たな事態を知らせます。媚娘(びじょう)が軍務への幹渉により新たな危機に直面しているというのです。事態を重く見た媚娘は、すぐに徐慧(じょ・けい)と会い、事実関係を明らかにしようと決意します。同時に、この危機を乗り越えるため、朝廷内の勢力を利用することを考え、最終的に身分は低いものの将来性のある李義府を味方につけようとします。
第56話あらすじとネタバレ
政治的繋がりと生き残りをかけた試練
媚娘(びじょう)は長孫無忌(ちょうそんむき)が自身にとって直接的な脅威であると認識し、この強大な敵に対抗するために李義府と手を組むことを決意する。長孫無忌(ちょうそんむき)は常に媚娘(びじょう)の排除を企てており、媚娘(びじょう)は自らの身を守るために行動に出ざるを得ない状況に追い込まれていた。二人は共通の敵を持ち、長孫無忌(ちょうそんむき)が失脚しなければ、二人の将来は暗いものとなる。李義府は利害を天秤にかけ、媚娘(びじょう)に協力することで得られるであろう朝廷での地位と権力、そして太子の支持を得る可能性について思案する。しかし、媚娘(びじょう)が今夜を生き延びられるかどうかわからないという噂もあり、彼は躊躇していた。それでも、もし媚娘(びじょう)が生き残ることができれば、李義府は命を懸けて彼女に従う覚悟を決める。
別れと犠牲
差し迫った危機に直面した媚娘は皇上に謁見を求め、皇上に迷惑をかけないために宮廷を去ることを申し出る。そして、現状の政治的膠著状態を打開するため、侍女に降格して高陽公主に付き添い房府へ嫁ぐことを願い出る。皇上はこの申し出を苦渋の末に受け入れ、媚娘へのいかなる怠慢や危害も厳罰に処すると約束するが、内心ではそれを望んではいなかった。長孫無忌(ちょうそんむき)はこれが皇上のその場しのぎの策だと考え、不満を抱き、皇上の怒りを買う。
戦場からの帰還と悲しみ
皇上は北境の戦場での日々を思い出す。当時はまだ二人は離れ離れになることはなかったが、今や宮廷内での政争によって引き裂かれようとしている。皇上は媚娘に戦場での出来事を他人に話したかどうか尋ねる。媚娘は否定し、個人的な問題で皇上と大臣が対立し、天下の人々が失望するような事態は望まないと答える。皇上は天下のために、媚娘を裏切るという選択をする。
宮廷内のうごめく陰謀
徐恵(じ・ょけい)は媚娘が侍女に降格されただけのことを知り、怒りを感じる。なぜ媚娘がこのような危険な状況を生き延びることができたのか理解できない。媚娘は徐恵(じ・ょけい)を御花園に呼び出し、噂を広めたのが彼女かどうか問いただす。徐恵(じ・ょけい)は自分の行いを認め、瑞安(ずいあん)が太子に会うのを阻止したこと、文娘(ぶんじょう)を殺害したことなど、媚娘がいなくなれば自分が幸せになれると信じていたことを告白する。しかし、媚娘は徐恵(じ・ょけい)にこれ以上他人を害することをやめなければ報いを受けると警告し、徐恵(じ・ょけい)の最後は良くないだろうと予言する。この会話は皇上に聞かれてしまい、承乾(しょうけん)の仮乱も徐恵(じ・ょけい)の影響であることを知る。皇上は徐恵を罰することはなかったが、自害を禁じ、錦楽宮で一人で暮らすように命じる。
恋慕と待ち望む日々
互いに思いながらも、媚娘と皇上は彼女の安全のために距離を置くことが必要だと理解している。高陽公主が主催した杏林の酒会には辯機(べんき)和尚と太子が招待され、皇上がすでに媚娘を冷遇しているのではないかという噂が流れる。媚娘は太子に見舞いに来て危険を冒すのではなく、本当に自分のことを考えて行動してほしいと願う。
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