『皇后劉黑胖』 第17話:「黒胖、その心は測り難し」

金鳳(きんぽう)は香羅殿に戻らず、そのまま太后宮へと向かった。しばらく太后に挨拶をし、用事を仰せつかった後、ようやく香羅殿へ戻った。椅子に腰を下ろすと、金鳳(きんぽう)はぴくりとも動こうとしなかった。

「素方(そほう)、《列国誌》を取ってきて。半分まで読んだきりなの」

「素方(そほう)、昨日届いたばかりの蜜餞を一つ持ってきて」

椅子の上で小さな山になっている自分の主を見て、素方(そほう)はため息をついた。

「娘娘、このままではいけません」

「どうして駄目なの?」

「今日の様子では、皇上は白玉様にすっかりお心を奪われているようです」

金鳳(きんぽう)は大きく頷いて同意した。「私もそう思う」

「娘娘、少しも危機感がないのですか?」

金鳳(きんぽう)はうつむいて考え、そして笑った。「大丈夫よ、彼は皇后を廃したりしないわ」

「……」素方(そほう)は目を丸くして叫んだ。「娘娘!皇后を廃するとかしないとかの問題ではありません!これは後宮での娘娘の地位、皇上のお心の中での娘娘の地位に関わることなのです!娘娘……娘娘の望みはそんなものなのですか?」

「じゃあ、私にどうしろと言うの?」金鳳(きんぽう)は困ったように言った。「皇上に『まあまあ、皇上、蘭の絵は本当にお上手で……特別で……素晴らしくて……とにかく……』なんて言うべきだとでも?」

素方(そほう)はぷっと吹き出し、足を踏み鳴らした。「娘娘!」

ああ、自分の主人の良さは、他の人にはわからない。

しかし、自分の主人のどこが良いのか、素方(そほう)は実際には言葉にできなかった。

金鳳(きんぽう)は《列国誌》を抱え、蜜餞を口にしながら、甘く幸せな気分で数ページを読み進めた。その時、外から宮人が入ってきて、皇后娘娘宛ての手紙を差し出した。

金鳳(きんぽう)は驚いた。「誰から?」

「威国公夫人からの使いで届けられました」

金鳳(きんぽう)はさらに驚いた。

もし重要な用事があれば、劉大夫人はきっと自ら宮中へやってくるだろう。

もし大したことのない用事なら、なぜこんな時に手紙を送ってくるのだろうか?

わからない。彼女は手紙を手に取り、重さを確かめた。薄い紙一枚だった。

金鳳(きんぽう)は思い切って封を切った。便箋には、歪んだ字でこう書かれていた。

愛娘 黒胖(こくはん)へ

金鳳(きんぽう)の脳裏にひらめいた。これは母、(えい・ふく)が隣の趙屠夫に頼んで書いてもらった手紙だろう。

(えい・ふく)からの知らせは、いつも劉大夫人が宮中に来た時に伝えられるので、金鳳(きんぽう)が直接(えい・ふく)からの手紙を受け取るのは初めてだった。劉大夫人によると、(えい・ふく)は以前住んでいた小さな家を離れたがらず、劉大夫人も無理強いはできなかったという。しかし、生活面では劉大夫人がいろいろと援助していたので、(えい・ふく)はそれなりに満足して暮らしていた。

ただ……ああ、趙屠夫の字は、本当に見るに堪えない。金鳳(きんぽう)は手紙を見ながら、一筆一画から豚の血が飛び散っているような気がした。

読み進めていくうちに、金鳳は笑えなくなった。

彼女の表情は次第に曇っていった。

軒羅殿では、段雲嶂(だん・うんしょう)が読んでいた奏状をゆっくりと閉じた。

奏状には、ある富豪の家に正妻が一人、妾が数人いるにもかかわらず、富豪は満足せず、ある日、正妻の妹に手を出して妾にしようとした、という人命に関わる訴訟が書かれていた。正妻は長年冷遇され、嫉妬と憎しみに駆られ、ついにある夜、好色な夫をベッドの上で縊り殺した。刑部は正妻を秋に処刑するよう上奏し、聖上の裁可を求めていた。

ここまで読んで、段雲嶂(だん・うんしょう)は理由もなく背筋が寒くなった。

今日、亭羅殿で、小黒胖(こくはん)の恨めしそうな視線が針のように心に突き刺さった。

小黒胖(こくはん)の腕は丸々としている。人を縊り殺す……ことは不可能ではないだろう。

段雲嶂(だん・うんしょう)は咳払いをして、小孫を呼んだ。「お前は、皇后が本当に嫉妬していると思うか?」

「小的……存じません……」

「朕はお前の考えを聞いているのだ。遠慮なく言え!」

小孫は恐る恐る段雲嶂(だん・うんしょう)の顔を見上げ、すぐに頭を下げた。「小的……ここ数日、宮中で噂が流れているとだけ……」

「どんな噂だ?」段雲嶂(だん・うんしょう)は眉をひそめた。

「皇后娘娘が寵愛を失い、いつか……いつか……」

「早く言え!」

小孫はひれ伏して言った。「皇后娘娘はいつか廃されて、冷宮送りになると……」

「誰がそんな噂を流したのだ?」段雲嶂(だん・うんしょう)は激怒し、奏状を機に叩きつけた。

小孫は身動き一つしなかった。「小的……存じません……」

段雲嶂(だん・うんしょう)の怒りは心の中で何度も渦巻いた後、ようやく収まった。

小黒胖(こくはん)が魏(ぎ)太傅のために威国公にとりなそうとしなかったのは、段雲嶂(だん・うんしょう)も理解できた。ただ、心の中の小さな不満はなかなか消えず、それが小黒胖(こくはん)への怒りとなって表れたのだった。

威国公の娘だから仕方がない。

だが、劉白玉(りゅう・はくぎょく)も威国公の姪なのだ。なぜ劉白玉(りゅう・はくぎょく)は許容できても、小黒胖(こくはん)は許容できないのか?

あれこれ考えているうちに、小黒胖(こくはん)のあの目が再び脳裏に浮かんだ。彼はついに決心した。

「小孫、香羅殿へ行くぞ」

小孫は驚いた。皇帝が香羅殿を訪れてから、もう半年近くになる。

香羅殿では、大小様々な宮人たちが愁眉苦顔で、総管の素方(そほう)の顔さえも深い悲しみに覆われていた。

段雲嶂(だん・うんしょう)は両手を背に組んで香羅殿に入った。小黒胖(こくはん)がすぐに出てきて出迎えると思っていたが、意外にも素方(そほう)が一人、おずおずと跪いているだけだった。

「皇后はどこだ?」段雲嶂(だん・うんしょう)の表情は少し険しくなった。

素方(そほう)は頭を下げた。「娘娘は本日……少し具合が悪いようでございます」

「どんな具合が悪い?太医を呼んだのか?」

「体の具合ではございません……」素方(そほう)はもごもごと呟き、段雲嶂(だん・うんしょう)をちらりと見て、慌てて頭を下げた。「お言葉も憚りながら、皇上、どうか早く皇后娘娘をご覧になってください!」

段雲嶂(だん・うんしょう)の胸は高鳴った。「どうしたのだ?」

「娘娘は午後からずっと殿後の石段に座ってぼんやりとしており、何もおっしゃいません。皆、たいそう心配しております」素方(そほう)は泣き出しそうだった。「娘娘はいつも笑顔の方なのに、このようなお姿は初めて見ました」

段雲嶂の濃い眉は深く寄せられた。まさか、本当に悲しんでいるのだろうか?

先日の宴で、皆の前で彼女に「出て行け」と言った時でさえ、彼女はそれほど悲しんでいなかった。その日には半斤もの瓜子を食べたらしい。なのに、今回はなぜ悲しんでいるのだ?

「朕が見に行こう」

段雲嶂は袍の裾を払い、殿後へと向かった。

遠くから、石段の一番下に小さな丸い背中が座っているのが見えた。綾羅錦緞を身にまとい、頭にたくさんの宝石を飾っていても、広がる青空と白い雲、赤い壁と金の瓦の中で、ひどく孤独に見えた。

段雲嶂の心の奥底に潜んでいた憂鬱な気持ちが、さらに深まった。

彼は石段を下り、金鳳の後ろに座り、彼女の肩を軽く叩いた。

「朕が来たぞ。皇后はまだ挨拶もしないのか?」

金鳳の背筋はぴんと伸びたが、すぐに水に濡れた綿のように崩れ落ちた。

「皇上、ご機嫌麗しく」と、ぶっきらぼうに一言だけ言い、振り返りもしない。

段雲嶂はむっとした。

彼はとっくに気づいていた。この小黒胖(こくはん)の礼儀正しさは、他人に見せるための演技なのだ。彼女がしたくないことは、誰もどうすることもできない。

咎めることはせず、彼は慎重に尋ねた。「皇后、なぜそんなに物思いにふけっているのだ?」

相変わらずぶっきらぼうな一言が返ってきた。「物思いにふけってなどいません」

小黒胖(こくはん)は意外と意固地なのだ。

「物思いにふけっていないなら、皇后はここで夕日を見ているのか?」段雲嶂は空を見上げた。空には白い雲が気持ちよさそうに漂っており、日没まではまだ二時間ほどあった。

「……」金鳳は沈黙で応じた。

段雲嶂は長い間彼女の返事を待ったが、ついに我慢できなくなり、彼女の正面に回り込み、手で彼女の顔を上げた。

その顔を見て、段雲嶂は呆然とした。

金鳳は泣いていた。

黒くて丸い顔に二粒の涙が流れ、明るい瞳は潤んで、傷ついた小熊のようだった。

段雲嶂の心はぎゅっと締め付けられた。彼は金鳳が泣くのを見たことがなかった。小黒胖(こくはん)は彼の心の中ではいつも、かすかに微笑んでいたり、媚びるように笑っていたり、あるいは狡黠に笑っていたりした。とにかく、小黒胖(こくはん)は笑っていたのだ。

彼はしばらく黙り込み、彼女の顔の涙を拭った。「誰がそなたをいじめたのだ?朕が仕置きしてやろう!」

金鳳はようやく彼を見た。この皇帝は、興奮すると「朕」を忘れてしまう。

彼女は急に立ち上がった。「皇上、誰も臣妾をいじめてなどいません」そう言って、彼女は振り返り、一歩一歩戻っていった。

段雲嶂はその場でしばらく考え、そして二歩駆け寄った。「この半年、朕が香羅殿に来なかったせいなのか?宮中にはおしゃべりな者もいる。気にするな」

「おしゃべり?」金鳳はぽかんとした。

段雲嶂はうつむいた。「黒胖、実は……実は朕は怒っていたわけではないのだ……ただ、そなたの父が……」

「皇上」金鳳はため息をつき、呆れたように言った。「そんなに暇なのですか?」

「え?」段雲嶂が驚いていると、皇后の小黒胖は彼に背を向け、石段を上がっていく。複雑な髪飾りを付けていても、首をまっすぐに上げて去っていく。高貴な皇帝陛下は、彼女に一人残された。

皇帝の端正な顔に、再び深い皺が刻まれた。