『蒼蘭訣』 第1話:「楔子」

「不死身であるこの本座に、三界は広くとも、宙宇は果てしなくとも、敵う者などいまだかつて存在しない。」黒影は溶岩の上に静かに横たわり、戯れるように真っ赤に燃える溶岩を掴み上げた。「貴様のような一介の女が、この本座を剣で斬ろうというのか?」

凛とした殺気が鋭い長剣に纏わり、剣を構えた女は宙に浮かび、唇の端をわずかに上げて、魔尊よりもさらに傲慢に笑った。「東方青蒼(とうほうせいそう)、貴様は戦いを恐れているのではないか?」

「ハハハハ!恐れているだと?」東方青蒼(とうほうせいそう)は大仰に笑い、掌中の燃え盛る溶岩が激しく燃え上がり、炎は空中で赤熱した長剣へと凝縮し、迸る灼熱の気配に女の衣が揺れた。「赤地女子(せきちじょし)、天界の役立たずどもが貴様を天地戦神に封じ、この本座にこれほどまでに歯向かうとは、それなりの実力があると自負しているのだろう。」

東方青蒼(とうほうせいそう)は目を細めて微笑み、立ち上がると、銀白色の長い髪は足首まで届き、一歩踏み出すたびに、火山はまるで恐れているかのように震え揺れた。

「ちょうど、今日は退屈していたところだ。」東方青蒼(とうほうせいそう)はそう言うと、手首を持ち上げ、炎の剣が彼の顔の半分を覆い、切れ長の目に魔気がさらに漲った。「この本座が、貴様の力試しをしてやろう。」

「魔尊。」赤地女子(せきちじょし)は手にした寒剣を構えた。「油断は大敵、兵法の禁じ手。」

東方青蒼(とうほうせいそう)は口元を歪めて笑った。「弱者にこそ禁じ手がある。」彼の血色の目は冷たく光り、人間よりも鋭い牙に炎の光が映り、極めて傲慢だった。「この本座に禁じ手などない。」

上古の魔尊と赤地女子(せきちじょし)の一戦は、天地を変色させ、昼夜を逆転させ、星々の運行さえも狂わせた。しかし、まさにその戦いで、三界をほしいままにした魔尊は赤地女子(せきちじょし)の剣に敗れた。これにより、赤地女子(せきちじょし)の天地戦神の威名は広く知れ渡り、東方青蒼(とうほうせいそう)はその戦いで重傷を負い、ついに諸天神仏の総力によって討ち取られた。

魔界の者はその後、全て九幽の不毛の地に追放され、二度と勢いを取り戻すことはなかった。

「東方青蒼(とうほうせいそう)は死んだのか?」

「魔尊は不死身であり、輪廻転生することなく、魂は消滅せず、機が熟せば、再び戻ってくるだろう。」

鉢植えの蘭の草が葉を揺らした。「では、いつ戻ってくるのですか?ご主人様…私は死ぬのが怖い…」

「二度と戻ってこさせはしない。」司命(しめい)は筆を執り、命格を記した。「私、天帝、そして今の戦神である陌溪、南天門の門番でさえ、昨日、お前に水をくれた仙女でさえ、彼を戻ってこさせはしない。だから安心しろ、死ぬことはない、いい子だ。」

当時、司命(しめい)からこの上古の話を軽く聞かされた時、小蘭花(しょうらんか)はどうしても、ある日自分が本当に魔尊の復活を目撃し、三界への帰還を見ることになるとは思ってもみなかった。ましてや、この上古の大魔頭と面と向かって挨拶を交わし、睨み合うことになるとは。

彼女が頭を悩ませても想像もできなかったのは――

ある日、自分がこの不老不死で、魔力に満ち溢れ、悪事を重ねた大魔頭の…

身体を…使うことになるとは。