『上古』 第45話:「三宝(下)」

玄天殿。内外に配置された仙将たちは、突如として飛来する膨大な霊力を感じた。彼らが我に返る間もなく、金光が一度閃くと、清穆(せいぼく)が既に大殿の中に出現していた。その表情は冷淡で、張り詰めた空気が漂っていた。

金光の威圧の下、玄天殿を数万年もの間守護してきた白い霊光が、ゆっくりと後退していくのが見えた。ついには、怯えるように隅っこに縮こまってしまった。白い霊力は天帝(てんてい)の本源の力から化生したもので、極めて人に近い性質を持ち、普段は高慢で尊大な様子を見せていた。このような姿を見せることなど、かつてあっただろうか。仙将たちは来訪者である清穆(せいぼく)を見つめ、自らが動くことができないのを感じ、顔色を大いに驚かせ、表情が一変した。

清穆(せいぼく)だと認識した仙将たちの眼底には、恐怖の他に明らかな疑問の色が浮かんでいた。清穆(せいぼく)上君はどうして玄天殿に侵入したのだろうか……。清穆(せいぼく)の視線を辿ると、彼が王座に向かって真っ直ぐに歩いていくのが見えた。仙将たちは驚き震えた。まさか清穆(せいぼく)上君は聚霊珠を狙っているのだろうか?

聚霊珠は仙界の至宝。どうして彼はこんな大胆なことができるのだろうか?

王座の頂上には、白光を放つ聚霊珠が四角い水晶の中に嵌め込まれていた。温かく尊貴な気が王座から広がり、宮殿全体を包み込んでいた。

さすがは三界の主宰の印璽だと、清穆(せいぼく)は目を細めた。殿中の仙将たちの怒りに満ちた視線を無視し、王座へと歩みを進めた。

「清穆(せいぼく)上君、待ってください!聚霊珠は玄天殿の支柱です。こんなことをすれば、玄天殿が崩壊してしまいます!」

仙将たちの慌てた叫びをまるで聞いていないかのように、清穆(せいぼく)は王座の前に震える白い霊光を破り、水晶に触れた手がわずかに震えた。一度は弾かれたものの、軽く眉を上げ、指先の金色霊力を強めて水晶を粉砕し、聚霊珠を取り出した。

聚霊珠が王座から離れた瞬間、玄天殿全体が震え始め、瓦礫が崩れ落ちた。王座は瞬時に灰と化し、聚霊珠の周囲から万丈の霊光が広がった。突然現れた濃厚な霊気に、天宮の仙君たちは驚き、天宮の中央に浮かぶ玄天殿を見上げた。

そこでは、白い光が突然現れ、一抹の金光がそれに混じり、この上なく尊大な様子で、かすかに天を切り裂いていた。

二つの非常に強力な気が玄天殿に向かってきているのを感じ、清穆(せいぼく)は眉をひそめ、聚霊珠をしまい、殿外の天門へと飛び立った。

上を見上げていた仙君たちは、何が起こったのかを理解する間もなく、数名の守殿仙将が乱暴に投げ出されるのを見た。そして、轟音とともに、天宮に数万年もの間そびえ立っていた玄天殿が崩壊し、虚無へと帰した。その後、金光がその中から飛び出し、天門へと向かっていった。

がらんとして、どこか寂しい空を見ながら、仙たちは顔を見合わせた。一体誰がこんな大胆なことをして、天帝(てんてい)の玄天殿を破壊したのだろうか?

「清穆(せいぼく)、よくも聚霊珠を盗み、玄天殿を破壊したな!朕はお前を絶対に許さない!」

威厳に満ちた冷たい声が天を切り裂き、黒い人影が天宮の奥から飛来し、ちょうど天門の前に止まり、清穆(せいぼく)の行く手を阻んだ。

天帝(てんてい)は空中に浮かび、清穆を見つめる瞳には冷気が漂っていた。仙たちはようやく何が起こったのかを理解し、空中の一黒一青の二つの影を見つめ、どうすればいいのか分からずにいた。

清穆上君は九天玄雷に耐え、いずれは上神へと昇格し、天地の中の至尊の存在となるはずだった。どうして天后(てんこう)の寿宴の日に、このような愚かなことをしてしまったのだろうか!

白い光が突然現れ、巨大な開天斧が天帝(てんてい)の手から出現し、清穆へと振り下ろされた。押し寄せるような威圧に、清穆の瞳の色は闇くなり、複数の影に分かれて立ち向かった。今の彼の力では、天帝(てんてい)に勝利することは不可能だった。ましてや、同じ上神の力を持つ天后(てんこう)がまだ現れていない。そのため、彼はこの方法を選ぶしかなかった。金光の幻影を使って突破するのだ。

「蛍の光が、よくも皓月と争おうとしたものだ!」

冷哼一声。無数の開天斧がそれに応じて現れ、清穆の化身である幻影の前に立ちはだかった。驚くべきことに、全く隙がなかった。

清穆の顔色はわずかに変わり、眼底には一抹の真剣さが浮かんだ。天帝(てんてい)は明らかに全力を出し、容赦するつもりは全くない。彼はため息をつき、幻影を再び一つにまとめた。金光の下、炙陽(せきよう)槍が開天斧の前に立ちはだかり、清穆は瞬時に速度を上げ、背後の安全を全く気にせず、天門へと真っ直ぐに向かって行った。

天門の外へと突進する清穆をちらりと見て、天帝(てんてい)は目を細め、手を一振りすると、黒い光が振り下ろされ、清穆に直撃した。青い人影が一瞬ひるんだのを見たが、それでも立ち止まろうとしない様子に、天帝(てんてい)の怒りは燃え上がり、最後の忍耐が尽きた。手のひらに霊力が突然現れ、純粋な白い霊光が空中に集まり始めた。晴天の霹靂。天門全体が闇くなったかのようだった。巨大な擎天巨掌が天に現れ、清穆へと振り下ろされた……。

天門は目前に迫り、背後からは激しい掌風が襲ってきた。清穆は唇を噛み締め、頑なに前へと飛んだ。

九天玄雷にも耐え抜いたのだ。今度こそ逃げ切れないはずがない。

「嗷……」

巨掌が振り下ろされるその時、金色の龍が突然空中に現れ、その一撃を真正面から受け止めた。そして、炙陽(せきよう)槍と対峙していた開天斧と戦い始め、天帝(てんてい)の前に立ちはだかった。

空中で起こった信じられない光景に、人々は目を瞬かせ、信じられないといった様子だった。

三界において、天帝(てんてい)を除けば唯一の金龍は、天后(てんこう)が生んだ景昭(けいしょう)公主であった。

「景昭(けいしょう)、よくも奴を助けたな。清穆が聚霊珠を奪い、玄天殿を破壊し、天規に背いたことを知らぬのか?」

炙陽(せきよう)槍が突如手に戻ってきた。異変に気づき、既に逃れたはずの清穆は振り返り、天帝(てんてい)の怒りの言葉を聞き、天帝(てんてい)の前に立ちはだかる金龍を呆然と見つめたまま、立ち止まった。懐中の聚霊珠もまた、この瞬間、灼熱の滾るような熱を帯び始めた。

巨大な金龍は天に浮かび、龍鱗が翻り、傷口からは血が滴り落ちていた。天帝を見つめる金色の大きな瞳には、懇願の色が満ちていた。そして、清穆へと振り返った。

「早く行きなさい!あなたが聚霊珠を何に使うのかは知らないけれど、もし逃げられなければ、天宮に侵入して宝を奪ったところで何の意味もない!父皇は私を可愛がっているから、私を責めたりはしないわ!」

焦燥した声が金龍の口から吐き出された。清穆は初めて、その瞳の中に愛情と心配だけでなく、決して諦めないという強い意誌を垣間見た。

彼は複雑な表情を浮かべ、深く息を吐き、炙陽(せきよう)槍をしまい、景昭(けいしょう)に言った。「景昭(けいしょう)公主、今日の恩は、清穆、必ずや後日お返しいたします。」

言葉が終わると、彼は天に向かって深く一瞥し、身を翻すと妖界の方角へ飛び去った。

「父皇、どうかお許しください。」金龍は振り返り、ゆっくりと口を開いた。開天斧の下で、巨大な体はさらに少し後退させられ、声は沈んでいた。

最期まで、彼は彼女を「景昭(けいしょう)公主」と呼ぶことしかできなかった。

「お前は本当に救いようがない!」天帝は袖を振り払い、天門から清穆が消えるのを見て、冷然とした表情で怒鳴った。「景昭(けいしょう)、お前は公主の身でありながら、私情のために天規を無視するとは。この数万年、私はこのようにお前を教育してきたつもりだ!」

景昭(けいしょう)を見つめる天帝の瞳には、失望と痛惜の色が満ちていた。最後に手を振ると、瞳の中の感情は全て消え失せ、氷のように冷徹な決意へと変わった。そして、天帝の堂々たる声が天に響き渡った。

「公主景昭(けいしょう)、上君清穆の天宮からの逃亡を幇助した罪により、本日より上君の位を剝奪し、鎖仙塔に万年幽閉とする。」

「暮光(ぼこう)、やめて!」数人の影が遠くから飛来し、天帝の傍らに降り立った。天后(てんこう)の視線は傷だらけの景昭(けいしょう)に注がれ、瞳には痛ましい色が満ちていた。「昭児、早く父上に謝りなさい!」

景陽(けいよう)と景澗(けいかん)もまた、心配そうに彼女を見つめていたが、何も言えなかった。彼らは、景昭(けいしょう)が天帝に逆らうほどの胆力を持っているとは、夢にも思っていなかったのだ。

景昭(けいしょう)は金色の瞳を瞬かせ、人型には戻らず、龍の体を少し曲げ、頭を下げて言った。「臣、天規に背き、罰を受け入れます。」

景昭(けいしょう)が自ら罰を受け入れるのを見て、天帝の瞳にはわずかな驚きが浮かび、激しい怒りは少し和らいだ。しかし、彼はやはり手を振り、天后(てんこう)の懇願の視線を無視して言った。「ならば、行きなさい。」

言葉が終わると同時に、天宮の奥深くにある鎖仙塔が天門の上に現れ、丈ほどに大きくなり、幽玄な光沢を放ちながら、傷だらけの金龍を完全に包み込んだ。

光の幕の下で、巨大な龍の体は徐々に小さくなっていった。彼女は天帝と天后(てんこう)に一瞥をくれ、瞳には未練の色を帯びて言った。「父皇、母后、景昭(けいしょう)は不孝者です。二人の兄上…お元気で。」

天后(てんこう)は目を赤くし、顔を背けた。天帝は依然として冷淡な表情で、拳を握りしめ、手を振ると、金龍は鎖仙塔に吸い込まれた。鎖仙塔は空中で一回転し、天宮の奥深くへと飛び去り、茫漠とした空間に消えていった。

天門には冷え冷えとした空気がゆっくりと広がり、天帝と天后(てんこう)の怒りを感じ、仙人たちは皆、口をつぐんで頭を下げ、心の中でため息をついた。盛大な寿宴は、聚霊珠が奪われ、玄天殿が破壊され、景昭(けいしょう)公主が幽閉されるという結末を迎えた。今回は、たとえ古君(こくん)上神が嘆願しても、天帝は簡単には許さないだろう。

「四大天君はどこにいる?」威厳のある声が天帝の口から吐き出され、彼は天門の下に集まった仙人たちをゆっくりと見渡し、表情を読み取れない様子だった。

「臣、ここに。」風火雷電を司る四大上君は、天帝の呼び出しを聞き、ためらうことなく進み出て、跪いて命令を待った。

「お前たち四人は兵を集め、私と共に上君清穆を捕らえよ。」言葉が終わると、天帝は先頭に立ち、清穆が消えた方角へ飛び去った。天后(てんこう)と景陽(けいよう)は少し間を置いて天帝の後を追い、景澗(けいかん)は複雑な表情で鎖仙塔が消えた場所を一瞥し、深くため息をついた。

清穆には聚霊珠を奪う理由がない。もしあるとすれば…後池(こうち)のためだ。だとすれば鳳染(ほうせん)も巻き込まれているのではないか。そう考えると、彼は表情を硬くし、天帝と天后(てんこう)が消えた方角へ急いで追いかけた。

「天帝の勅命だ、三軍は持ち場に戻り、上君清穆を捕らえよ。」

四大天君は立ち上がり、天に向かって律令を下した。瞬く間に、数万の天兵が空に現れた。

銀白の鎧、火紅の纓絡、冷たく硬い長戟、殺伐とした空気がゆっくりと天門の前に広がっていく。

鬨の声と共に、四大天君はそれぞれ軍を率い、天帝の方角へと向かった。

空を覆い尽くす仙雲、万年動かなかった仙界の大軍は、冷徹な光沢を放ちながら、仙界から妖界へと続く空に、漆黒の死神の鎌となって、消えゆく命を刈り取ろうとしていた。