概要/あらすじ
白風黒息――武林に名を馳せる二人の侠客。本作は、天下を巡る争いと、その中で芽生える切ない愛を描いた武侠ロマンスです。
物語の中心人物は、白風こと風国の惜雲公主と、黒息こと豊国の世子、蘭息公子。自由奔放で聡明な白風夕(はくほうせき)と、冷徹で計算高い黒息。二人の出会いは、互いの利害が一緻した、打算的なものから始まります。
黒息は「仁王」として民に慕われながらも、天下統一を密かに企み、その野望のため惜雲に近づくのでした。八年もの歳月をかけ、惜雲のために幻の花「蘭因璧月」を育て、蘭息公子として彼女を娶ります。しかし、二人の間には深い溝が…。
東旦の戦いで惜雲が深手を負った時、黒息は秘術「雪老天山」を駆使し、自らの寿命と引き換えに彼女を救います。この出来事が、黒息の凍てついた心を溶かし、真の愛に気付かせる転機となります。
若さを失った黒息でしたが、やがて治療により元の姿を取り戻します。そして、天下を手中に収める寸前、惜雲と共に争いから身を引く道を選びました。
策略と愛憎が渦巻く中で、二人の運命はどのように展開していくのか。武侠の世界を舞台に繰り広げられる、壮大な愛の物語です。
登場人物紹介
白風夕(はくほうせき):
白い衣を纏い、月のように美しい白風夕(はくほうせき)。自由奔放で茶目っ気たっぷりな仮面、風王としては知性と威厳を兼ね備えた才媛です。自ら創設した精鋭部隊「風雲騎」を率い、戦場を駆け抜けます。黒息との政(まつりごと)略結婚を経て、真の愛に目覚めていく過程が描かれています。得意技は「鳳嘯九天」。
黒息(蘭息公子/豊国の世子):
黒い衣を纏い、墨のように深い魅力を放つ黒息。冷徹な戦略家で、「黒狐」の異名を持つ野心家。配下の精鋭部隊「墨羽騎(ぼくうき)」を率い、天下統一を目指します。惜雲への愛に気付き、自らの野望を捨てるまでの葛藤が描かれています。得意技は「蘭暗天下」。
皇朝(こうちょう):
天下統一を目指す若き王。野心家で、忠実な配下「風霜雪雨」の四将軍と、玉家の末裔である玉無縁(ぎょくむえん)の支えを受け、天下を統一します。
玉無縁(ぎょくむえん):
類まれな美貌と慈悲深さを持ち、「江湖(こうこ)第一公子」と称される人物。玉家の末裔でありながら、皇朝(こうちょう)に仕え、白風夕(はくほうせき)に秘めた想いを抱きながらも敵対することになります。皇朝(こうちょう)が天下を統一した後、玉家の宿命により、その生涯を終えます。
作者紹介
傾泠月(けいれいげつ)は、湖南省湘潭市出身の女性作家。読書好きが高じて作家となり、『且試天下』は彼女の代表作の一つです。
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