概要/あらすじ
転生をテーマにした中国小説『紈绔世子妃』は、雲浅月(うん・せんげつ)の異世界での波乱万丈な人生を描いています。天聖皇朝の雲王府の唯一の嫡女である彼女は、生前は傍若無人な振る舞いから「紈绔(がんこ:放蕩息子)」と呼ばれ、周囲から軽んじられていました。ある詩歌の宴で、愛する男性をめぐる争いに巻き込まれ命を落とした彼女は、現代へと魂がタイムスリップし、国家安全局で最も若く優秀な女性司令官として活躍します。しかし、祖国を守る任務の最中に殉職し、再び天聖皇朝の雲浅月(うん・せんげつ)の体へと転生することになります。
二度目の人生を歩み始めた雲浅月(うん・せんげつ)は、大きな試練とアイデンティティの葛藤に直面します。天聖皇朝の権力争いや一族内の確執だけでなく、以前と変わらぬ「紈绔」のイメージを払拭しなければなりません。前世の記憶と知恵を活かし、徐々に天聖王朝での地位を築き上げていきます。かつては役立たずの娘と蔑まれていた彼女が、類まれな知性と才能を持つ女性へと成長していく様子は、まさに圧巻です。
物語のクライマックスでは、雲浅月(うん・せんげつ)は自らの真の正体を明かし、夜軽染(や・けいせん)と結ばれます。夜軽染(や・けいせん)は物語の重要な登場人物であり、雲浅月(うん・せんげつ)とは深い絆で結ばれています。彼女の正体が明らかになった後も、揺るぎない愛情と支えを与え続けます。
雲浅月(うん・せんげつ)は、天聖皇朝の雲王府の嫡女という身分でありながら、実は現代国家の優秀な司令官という、二重の顔を持つ女性です。祖国のために命を捧げ、異世界に転生した彼女が、複雑な宮廷闘争を乗り越え、真の才能と身分を明らかにしていく過程は、読者を惹きつけて離しません。知性と勇気を武器に運命を切り開く彼女の物語は、感動と興奮に満ち溢れています。
主要人物
天聖皇朝
雲浅月(うん・せんげつ)
雲王府の嫡女。後に東海国第二王女であることが判明する。皇室への輿入れを避けるため、夜天傾の後を追い、10年間苦労して身分を偽っていた。世間では放蕩無頼、傲慢不遜、字も読めないという噂が流れていたが、実際は桃の花のように美しく、才思敏捷で、容景(よう・けい)の前では良妻賢母ぶりを発揮する。容景(よう・けい)を深く愛し、かつては彼のために鳳凰劫を開き、記憶を失った。夜軽染(や・けいせん)とは生生不離(実際は生死鎖情)の毒によって結ばれており、万年寒池で九死に一生を得て、最終的に生死鎖情を解き、容景(よう・けい)の元に帰る。
紫衣をまとい雲霞のような美しさ、氷雪のような肌、風華絶代の容貌を持つ。
容景(よう・けい)
栄王府の世子。景世子と呼ばれ、「錦衣雪華玉顏色、回眸一笑天下傾」と謳われるほどの美男子。思慮深く、何事にも抜け目がない。雲浅月(うん・せんげつ)を一途に想い続け、10年以上も恋い焦がれている。嫉妬深く、子供っぽい一面も持つ。詩的な容貌と高い才能を持ちながらも、運命に翻弄される。7歳で催情引を浴びせられ、後に寒毒にも侵され、10年間病に伏して屋敷から出られなかった。十大世家筆頭の楚家の家主でもあり、楚容、字は子帰。墨閣の主人、慕容(ぼよう)氏の子孫であり、後に容朝の皇帝となる。
天子にも劣らぬ尊厳、王侯をも凌駕する気品、雍容雅緻で並ぶものなき王侯。
容凌(よう りょう)
雲浅月(うん・せんげつ)と容景(よう・けい)の息子。名は凌、字は雲開。容朝の太子。上官茗玥(じょうかん めいげつ)より賜った名前の由来は、「雲山に生まれ、紫気が東より来たり、天より貴運が降り注ぎ、俗塵を凌駕する。容凌と呼ばずして何と呼ぶ」。
容軽(よう けい)
番外編に登場する容景(よう・けい)と雲浅月(うん・せんげつ)の次男。容朝の第二皇子。字は月明。
容含(よう がん)
番外編に登場する容景(よう・けい)と雲浅月(うん・せんげつ)の娘。
夜天賜(やてんし)
天聖皇后が先帝の死後に産んだ息子。先帝が夜氏の天下を守るため、天聖皇后に生子果を服用させた結果生まれた子。姉である雲浅月(うん・せんげつ)によって東海国へ送られ、東海国第二皇子に養育され、玉燕帰と改名される。
夜天傾(や てんけい)
天聖第二皇子、元太子。尊貴な身分も、先帝にとっては次期皇帝候補の踏み台に過ぎなかった。先帝の45歳の誕生日の際に、既に捨て駒とされていた。現状を打破するため、秦玉凝(しん・ぎょくぎょう)と婚約し、第四皇子と共に謀仮を起こす。死ぬ間際に月妹(雲浅月(うん・せんげつ))を愛していると告げ、自害する。
夜天煜(や・てんゆう)
天聖第四皇子。運命のいたずらにより、前半生は太子を警戒し、後半生は太子と手を組むことになる。進退をよくわきまえ、身の程をわきまえている。陰謀渦巻く、情愛のかけらもない皇室において、彼は幸いにも趙可菡(故人)という愛する人に恵まれた。雲浅月(うん・せんげつ)の助けにより、玉青晴と共に東海国へ帰る。
白い肌、物腰の柔らかさ、深みのある瞳、清廉な顔立ち。
夜天逸(や・てんいつ)
天聖第七皇子。先帝の死後、摂政王に封じられる。夜軽染(や・けいせん)の即位後は安王に封じられる。若い頃、母方の家が罪に問われ(藍妃が藍家全体の滅亡と引き換えに、先帝に夜天逸(や・てんいつ)の帝位を約束させた)、一人で北疆へ赴く。幸いにも雲浅月に5年間支えられ、小七(玉子書)に価た容姿で、雲浅月に想いを寄せ、婚約するも、最終的に解消せざるを得なくなる。夜軽染(や・けいせん)の死後、夜天煜(や・てんゆう)と共に東海国に定住する。
春の月、立派な松の木のように、美しく清廉で、比類なき俊逸さを持つ。
夜軽染(や・けいせん)
天聖の新皇帝。徳親王府の若君。先帝の真の後継者。奔放で洒脱な性格から、小魔王と呼ばれている。幼い頃から後継者として育てられ、帝王学に精通している。夜氏の闇龍。8歳の宮廷の宴で雲浅月と互角に渡り合い、彼女の非凡さに気づき、恋に落ちる。雲浅月の記憶喪失後、幾度となく彼女を守り、彼女のために毒をもって毒を製し、忘情を解く。生涯、雲浅月を深く愛した。しかし、幼い頃から雲浅月には自分との間に生死鎖情の毒があり、また夜姓であることを知られていたため、彼女に避けられていた。最後は夜氏のために血祭となる。
魔王のような気質、生き生きとした表情、颯爽とした姿、奔放で美しい。
夜軽暖(やきょうだん)
徳親王府の若君。幼い頃から体が弱く、暖城で暮らしていた。後に京城へ戻る。表向きは南凌睿(なん・りょうえい)に好意を寄せているが、実際は容景(よう・けい)が好きで、夜氏の闇鳳。最終的に北青燁を駙馬に迎えるが、妊娠中に北青燁に二人の息子と九人の娘がいることを知り、鬱になり流産。寝たきりになり、最後は北青燁と共に心中する。
冷邵卓(れい しょうたく)
孝親王府の若君。かつては悪事を働いていたが、生死の境をさまよった後、改心して善人となる。雲浅月に好意を寄せる。第六王女と婚約していたが、番外編で欧陽茗と結ばれる。
雲暮寒(くも ぼかん)【偽】
雲浅月の兄。実際は真の南梁太子。冷峻な外見で、清婉公主に長年想いを寄せられていたが、本人は雲浅月に想いを寄せている。後に葉倩と共に南疆へ戻り、駙馬となる。夜軽染(や・けいせん)に脅迫され自害するも、葉倩の南疆秘術によって蘇生する。
雲離
元は雲王府の傍係。雲暮寒が去った後、養子として迎えられ雲王府の世子となる。武功は不得手だが、文才に恵まれている。七公主と結婚し、娘をもうける。娘は明珠郡主となる。七公主が亡くなった後、5年間再婚せず、番外編で蒋思雨と結婚する。
沈昭
慕容(ぼよう)氏の旧臣の息子。容景(よう・けい)を深く尊敬し、命を懸けて忠誠を尽くす。雲浅月とは親友。番外編で梁艶と結婚する。先代の南疆王から南疆秘術を学び、宰相の才能も持つ。
雲韶縁
真の雲王府の王爷。雲浅月と南凌睿(なん・りょうえい)の父。南梁の国師であり、東海の華王でもある。
容楓(ようふう)
文伯候府の末裔。天雪山老人に師事し、夜天逸(や・てんいつ)とは兄弟弟子。雲浅月に想いを寄せており、「あなたが好きな人は私も好きになり、あなたが嫌いな人は私も嫌いになる」と告げた。番外編で楚菱と結婚する。
容昔
栄王府の大総管。若年ながら落ち著きがあり、老成している。
秦玉凝(しん・ぎょくぎょう)
容景(よう・けい)に密かに想いを寄せており、雲浅月を憎んでいる。南疆の仮賊(かつては天聖王朝 の丞相)葉霄の娘。容景(よう・けい)と心中を図るも失敗し、軍妓として送られ、軍営で悲惨な死を迎える。
- 特徴:絶世の美女。しとやかで優しい。
秦丞相(葉霄)
長年南疆嫡係から分裂していた仮賊。後に雲浅月と沈昭によって滅ぼされる。
皇后
雲浅月の叔母。雲浅月に優しく、亡くなる前に夜天賜(やてんし)を産む。
明妃
清婉公主、六公主、七公主の母。表向きは皇后と親しいが、実際は腹の底が見えない。前任の闇鳳の主。夜軽染(や・けいせん)が即位した後、明太后となる。後に北疆で容楓(ようふう)に殺される。
清婉公主
天聖の公主。10年間雲暮寒に想いを寄せていた。雲浅月に殺される。
六公主(夜清蕪)
天聖の公主。明妃の娘。容景(よう・けい)に想いを寄せ、雲浅月を嫌っている。後に雲離と七公主の二の舞を踏まないよう、冷邵卓との婚約を解消し、出家する。
七公主(夜清薔)
天聖の公主。10年前に母である明妃に利用され、文伯候府の滅亡を招く。身の安全のために狂気を装う。容楓(ようふう)に想いを寄せているが、そのために利用される。後に雲離と結婚し、彼を愛するようになる。明珠郡主という娘をもうけるが、出産後に亡くなる。
趙可菡
兵部侍郎の娘。夜天煜(や・てんゆう)に想いを寄せ、後に彼と結婚する。夜天煜(や・てんゆう)が投獄され、紫草の毒によって命を落とす。
雲香荷(うん きょうか)
雲浅月の異母姉。鳳側妃の娘で、鳳老将軍の孫娘。孝親王府の三公子との婚約に不満を抱き、偽装自殺を図るが、それが本当の自殺となり命を落とす。
南梁帝国
南凌睿(なん・りょうえい)【偽】
雲浅月的本当の兄。南梁の太子。外見は奔放だが、内面は純粋。葉倩に想いを寄せたこともあったが、後に洛瑶と結ばれる。南梁王に即位した後、雲浅月のために国を傾けて容景(よう・けい)を支援する。
- 特徴:錦の衣を纏い、気品が漂う。桃花のような美貌で、いつも笑顔を絶やさない。
顧少卿
南梁の大将軍。10歳にして戦場を駆け巡る。後に雲浅月に命を救われるが、その代償として邪悪な功法を身につけ、満月の夜には女性の血を吸わなければならない。翠微と結婚する。
- 特徴:整った顔立ちで、凛々しい。澄んだ瞳と、鍛え抜かれた体を持つ。
南凌澈
南梁の六皇子。夜軽暖(やきょうだん)に協力して南梁王に催眠術をかけたりしたが、後に容景を助ける。
南疆
葉倩
南疆の公主。夜軽染(や・けいせん)、南凌睿(なん・りょうえい)との噂が流れる。南凌睿(なん・りょうえい)に想いを寄せたこともあったが、後に南疆のために雲暮寒を駙馬として迎える。妊娠中に彼を救うために禁術を使い、最後は共に世を捨てる。「銀色の月が紅を染め、千の川を踏んで一点の紅」と称される。
- 特徴:白玉のような顔、凝脂のような肌。艶やかで美しい。明るく華やか。
西延
西延玥
西延の太子。後に西延王となる。母(西延の女神)によって孝親王府の三公子として預けられ、王府で虐待を受ける。望春楼では嬌嬌と名乗り、冷邵卓を弄ぶ。西延に戻り、父(西延王)から太子に任命される。夜軽染(や・けいせん)と死の盟約を交わし(裏切れば、良い死に方はできない)、後に雲浅月のために自害し、盟約を守る。
東海国
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玉子書(ぎょく ししょ):東海国太子。容景と並び称される誉れと美貌の持ち主。前世では李芸(リー・ユン)と共に戦った小七であり、雲浅月にも非常に優しい。番外編で上官茗昕と結ばれる。
肌は玉の如く、眉は黛のように美しく、黒髪は墨のように深く、気品に満ち溢れている。
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玉子夕(ぎょく しせき):東海国第二皇子。南凌睿(なん・りょうえい)と同じく、天下にその風流ぶりで知られるが、実は純粋な心の持ち主。
顔立ちは美しく整っており、立ち居振る舞いは風流である。
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玉青晴(ぎょく せいせい):東海国長公主。雲浅月と南凌睿(なん・りょうえい)の母。南梁の公主であり、南梁王の双子の妹。雲王府の王妃であり、紅閣の主でもある。
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玉洛瑶(ぎょくら):東海国大公主。東海一の美女。才気に溢れ、意誌が固い。容景と婚約していたが、後に解消し、南凌睿(なん・りょうえい)と結ばれる。
華麗な衣装をまとい、淡いピンク色の薄紗を頭に被り、細い腰を優雅に揺らし、美しく佇んでいる。
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玉菱鈺(ぎょく りょうぎょく):東海国第三公主。柔らいで儚げな印象だが、本質は誇り高く、優しく、飾らない。玉紫蘿からは「林黛玉」とあだ名されている。当初は謝言に想いを寄せていたが、番外編で風燼と結ばれる。
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玉紫蘿(ぎょく しら):東海国第四公主。羅玉と名乗り、男装を好む。幼い頃から玉青晴と雲韶縁に育てられ、聡明で活発、しばしば周囲を笑わせたり困らせたりする。玉子書に懐いている。謝言を慕っており、幼い頃から謝言と婚約している。
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上官茗玥(じょうかん めいげつ):東海国燕王府の若様、雲族の少主、墨閣の閣主。実は容景と双子の兄弟。
威風堂々とした態度で、奔放で自由奔邁、星のように輝き、ひときわ目を引く。
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上官茗昕(じょうかん めいしん):東海国燕王府の大小姐。実は謝言の実の妹。
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謝言(しゃ げん):東海国丞相府の公子。真の燕王府の若様(「言」と「燕」の発音が同じことに由来)。玉紫蘿を慕っている。
十大家族
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莫離(ばくり):元は雲王府の隠主、雲浅月の影の護衛。後に莫家に帰り、莫家の家主となる。
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風燼(ふう じん):元風閣の閣主。後に風家を継ぎ、風家の家主となる。幼い頃に雲浅月に助けられ、雲浅月とは親友同士。
墨緑色の長袍を身につけ、痩身で、妖しく物憂げな雰囲気を持ち、自由気ままに振る舞う。
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蒼亭(そうてい):蒼家の家主。夜天逸(や・てんいつ)の幕僚であり、雲浅月に想いを寄せている。
気高く優雅で、落ち著き払っている。
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藍漪(らんぎ):藍家の家主。蒼亭(そうてい)とは幼馴染で、蒼亭(そうてい)に想いを寄せている。当初は夜天逸(や・てんいつ)に協力していたが、後に容景に仕える。
水のような青い衣装をまとい、冷たく高慢な印象を与える。
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凌墨(れいぼく):元は顧少卿の従者。母が冤罪で命を落とし、瀕死の状態のところを顧少卿に助けられる。後に凌燕を倒して凌家に帰り、母を死に追いやった四人の大叔父を殺し、凌家の家主となる。
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