『上古』 第83話:「鳳凰」

鳳凰が吐き出す火の蛇は実体を持つかのようで、絢爛たる炎を凝結させ、燃えるような霊力がかすかに漏れ出て、轟音と共に、巨大な光柱が羅刹地上空の黒霧を切り裂き、華麗な火の鳳凰の図騰がゆっくりと昇り、三界西境を照らした。

威厳に満ちた鳳凰の鳴き声が羅刹地上空に響き渡り、まるで遠い昔の戦いの序曲のようだった。

千裏も離れた擎天柱の神々の印が刻まれた場所に、火のように燃え盛る鳳凰が静かに姿を現し、鳳染(ほうせん)の名がはっきりと浮かび上がった。

南海梧桐島の鳳族の長老たちはほぼ同時に、この魂の奥底からの呼びかけを感じ、狂喜のあまり西境羅刹地へと飛翔した。

瞬く間に、三界の上空には、まるで万の鳳凰が舞い上がるような奇景が現れた。

灰白色の炎は燃え続け、ほぼ一時辰後、「カチャッ」という音と共に、火の玉はついに中心から割れ、咆哮する炎の舌が炎の道を作り出し、ぼやけた人影が中からゆっくりと歩み出た。

上古(じょうこ)は立ち上がり、心の喜びを抑えながら火の玉の中を見つめた。

十二万年、ついに彼女の聖獣がこの世に降臨したのだ。

半空の鳳凰の図騰はゆっくりと消え、歩み出た人影がはっきりと目に入り、誰もが静まり返った。

火紅の衣、物憂げな眉目、まるでこの世で最も醇厚な美酒のようだが、しかし静寂に沈んでいた。

半日前のあの奔放で奔放な鳳染(ほうせん)上君は、一瞬のうちに忽然と姿を消し、彼女は眉を少し下げ、腕に抱かれた青年はすでに息絶えていた。

天帝(てんてい)と天后(てんこう)は目を赤くし、今にも駆け寄ろうとしたが、鳳染(ほうせん)が上古(じょうこ)に向かって歩くのを見て、わずかな希望を抱いた。

天后(てんこう)は一瞬、景澗(けいかん)が生き返るのなら、この尊崇と恨みは捨てても構わないと思ったほどだった。

「上古(じょうこ)、景澗(けいかん)は…」鳳染(ほうせん)は上古(じょうこ)の前に立ち止まり、古井戸のように静かな瞳にようやく一抹の光彩が宿った。

上古(じょうこ)は景澗(けいかん)の体に神力を通わせ、ため息をつき、首を横に振った。「鳳染(ほうせん)、彼は兵解の術を使った。魂はすべて失われ、私にはどうしようもない。」

もし景澗(けいかん)の息が絶えた直後に駆けつけ、混沌の力で景澗(けいかん)の魂魄を少しでも保つことができていれば、あるいは一縷の望みがあったかもしれない。しかし、今はもう遅すぎた。

鳳染(ほうせん)の目は闇く沈み、景澗(けいかん)を抱く手がかすかに震えた。

天后(てんこう)は突然すべての力を失ったかのように、天帝(てんてい)に倒れかかり、唇を噛み、低い声でむせび泣き、鳳染(ほうせん)を恨めしげに見つめた。「鳳染(ほうせん)、景澗(けいかん)の命を返しなさい!あなたのためでなければ、彼は兵解の術を使うはずがなかった!」

彼女は先ほど仙将から事の顛末を聞き、三火がいるため、しばらくは妖皇をどうすることもできず、怒りを鳳染(ほうせん)にぶつけるしかなかった。

声が静まると、上古(じょうこ)の傍らの鳳染(ほうせん)がわずかに振り返り、墨のように濃い瞳で、静かに彼女を見つめていた。「黙りなさい、蕪浣(ぶかん)。あなたは彼にとって母親と呼ばれる資格はない。」

氷のように冷たい叱責は魂の奥底に突き刺さり、天后(てんこう)は息を切らし、顔色が悪くなり、鳳染(ほうせん)の皇者の血脈が目覚め、すでに以前とは比べものにならないことを思い出した。

「もしあなたが権力に執著せず、あの時軽々しく戦いを始めていなければ、仙と妖は血で血を洗うような恨みを持つことはなかった。景澗(けいかん)はあなたの罪を償っているのだ。」鳳染(ほうせん)の目には血のような赤い色が浮かんでいた。「この百年、羅刹地で彼がどのように耐え忍んできたか、あなたは知っているのか!」

天后(てんこう)は言葉を失い、目には後悔の色があったが、それでも頭を上げて鳳染を睨みつけ、頭を下げようとしなかった。

ここ数年、彼女がしてきたことはすべて鳳染の皇者の血脈が原因であり、今となってはもう後戻りはできなかった。

「鳳皇、たとえ我ら二人が間違っていたとしても、景澗(けいかん)はもう…」天帝(てんてい)は天后(てんこう)を脇に連れ、数歩前に出て、悲しげな表情で言った。「どうか彼の遺体を我らに返し、天辞山に葬らせてほしい。」

天宮の皇族には埋葬する場所があり、景澗(けいかん)はすでに亡くなっている。父親として、死後も安らかに眠れないままにはできない。

鳳染は目を伏せ、何も言わなかった。

上古(じょうこ)はため息をつき、何か言おうとしたその時、遠くから鳳凰の鳴き声が聞こえ、数十羽の鳳凰が羅刹地上空に現れ、人の姿に変わり、急いでこちらに向かってきた。

普段は容姿端麗な仙君や妖君を見慣れているため、今、十数人の白ひげの老人が同時に現れるのは珍しいことだった。ましてや、これらの老人は皆、仙力が漂い、皆、深みのある仙力を持っていた。

妖皇は眉をひそめた。鳳皇の降臨で、これらの鳳族の長老たちが迎えに来たのだろう。鳳染は邪悪な存在として鳳凰一族から追放されたと聞いていたが、今のこの光景は本当に笑える。

鳳染もこれを見て、眉を少しひそめたが、彼女の皇者の血脈は目覚め、上古(じょうこ)の時代から火の鳳凰の一族に受け継がれてきた神力だけでなく、祖先から受け継がれてきた使命と責任もまた血脈の奥底に刻み込まれていた。

彼女は鳳染であった頃は鳳族を無視することができたが、彼女が認めようと認めまいと、彼女は今や鳳皇なのだ。

十数人の老人は元気いっぱいで、目玉をくりくりさせながら天帝(てんてい)を無視し、次に天后(てんこう)を無視し、そして妖皇を無視し、上古(じょうこ)に視線を向けるときも急いで一礼しただけで、すぐに難しい顔をした鳳染に向かって走っていった。

天后(てんこう)の顔色はわずかに変わり、息を吸い込み、袍の下に隠した手を強く握りしめた。

天帝(てんてい)は彼女を一瞥し、複雑な表情を見せ、最後には失望だけが残った。

今になっても、蕪浣(ぶかん)はまだこれらの空虚な名誉を何よりも大切に考えている。

火の鳳凰の図騰が三界を照らし、さらに鳳染の血脈にある皇者の威厳も加わり、これらの鳳族の長老たちが今、鳳皇が誰なのかを知らないのは奇妙なことだった。

上古(じょうこ)は彼らの気持ちを理解していた。彼女は鳳染の降臨を十数万年待っていたが、皇者の血脈がなかなか現れず、目を疲れさせて待っていた鳳族の長老たちはなおさらだった。

「陛下。」

老いた男たちは次々と、本当に涙を流している様子で、鳳染は手を振り、彼らを止め、うんざりした様子で言った。「挨拶はいい。梧桐島に帰る。」

彼女は自由奔放に生きてきて、追放された恨みもあり、このような返答はすでに限界だった。

彼女は上古(じょうこ)を一瞥し、上古(じょうこ)が頷くのを見て、妖皇に向かって歩き出した。

鳳族の長老たちは首をかしげたが、それでも急いで道を譲り、威勢よく鳳染の後ろをついて行った。

自家鳳凰は数十万年の時を経てようやく涅槃を遂げたのだ。誰に出会おうとも、決して威厳を失ってはならない。

「鳳染……」鳳染が来るのを見て、常沁(じょうしん)は軽くため息をつき、一歩前に出て彼女の前に立ち塞がった。その表情にはかすかな懇願の色が浮かんでいた。

妖皇が何をしようと、彼女は鳳染が森鴻に手を出すのを黙って見ているわけにはいかなかった。

鳳染は何も言わず、彼女の視線をわずかに避け、森鴻へと視線を上げた。その瞳の奥は深く沈んでいた。

森鴻は常沁(じょうしん)を迂回し、鳳染の前に進み出て、彼女を見つめた。「鳳皇よ、もう一度同じ状況になったとしても、本皇は同じ選択をするだろう。」

鳳染は頷き、瞳の奥の沈んだ色は完全に消え、淡々と告げた。「分かっている、森鴻。もし仙妖の戦いでお前が生き残ることができたなら、南海梧桐島で、本皇はお前との一戦を待っている。」

一字一句、力強く凛とした声で言い放つと、鳳染は景澗(けいかん)を抱きかかえ、天帝(てんてい)の方へと向かった。

二つの種族の争いは今やどちらが正しいのか判断が難しい。景澗(けいかん)は妖皇のせいで死んだとはいえ、罪は妖族全体にあるわけではない。もし今日彼女が森鴻と戦うならば、妖界全体を混乱に陥れることになるだろう。

鳳凰一族は上古より存在し、三界の争いには介入しない。これまで蕪浣(ぶかん)が犯してきた過ちを、彼女は続けるわけにはいかない。そうでなければ、彼女と何が違うというのか?

ただ……鳳染は目を伏せ、腕の中の青年を見つめ、胸に酸涩いものがこみ上げた。景澗(けいかん)、あなたは私を恨むだろうか。

妖皇は彼女がゆっくりと遠ざかるのを見た。その後ろ姿は寂しげで冷然としていた。ふと蒼穹殿の宴席での気高く豪快な女神君の姿を思い出し、表情はどこか遠くを見つめているようだった。

仇は海よりも深く、二つの種族は対立している。たとえ一目見て意気投合したとしても、結局は友人にはなれないのだ。

鳳染は天帝(てんてい)の前に立ち、長い間沈黙した後、ようやくゆっくりと景澗(けいかん)を彼の腕に渡した。

暮光(ぼこう)が何かを言う間もなく、彼女は素早く振り返り、空へと舞い上がった。

「今日より、梧桐島の鳳凰一族は仙妖の争いに介入しない。鳳崎、本皇の勅命を伝えよ。もし違仮する者がいたら、永世追放の刑に処す。」

黒雲沼沢の上で鳳族の長老たちは一斉に頭を下げ、天后(てんこう)は驚き、鳳染はすでに彼女を見ていた。

「天后(てんこう)については……一界を統べる者として、この律の製約を受けることはない。しかし、仙妖の争いが終わるまでは、天后(てんこう)は仙界の身である以上、梧桐島に入ることはできない。」

天后(てんこう)は顔色を青くし、鳳染を睨みつけた。言葉は綺麗だが、これは彼女を追放するのと同じではないか!前に出て仮論しようとしたが、天帝(てんてい)に止められた。

「蕪浣(ぶかん)、鳳染は今や鳳皇だ。彼女が淵嶺沼沢に捨て置かれたことについて何も言わなかったのは、景澗(けいかん)のことを考えてのことだ。」

天帝(てんてい)の言葉を聞き、天后は二歩後退り、冷然とした表情で空中の鳳染を見つめた。無力感が心に押し寄せた。

上古の覚醒、鳳染の涅槃、景昭(けいしょう)の追放、景澗(けいかん)の死。最終的に彼女は最愛の人を失っただけでなく、すべてが六万年前と同じに戻ってしまったかのようだった。何も変わっていない。

天帝(てんてい)は一瞬で老け込んだように見える天后を見て、目をそらさずにはいられなかった。

世の中の因果とはこういうものだ。蕪浣(ぶかん)、今になって後悔しているか?

鳳染は上古の方を向き、「上古、梧桐島に一度戻らなければならない。一族のことが片付いたら、また会いに行く。」と言った。

景澗(けいかん)が死ぬまでは、過ぎ去ったことは過ぎ去ったことだと思っていた。しかし、景澗(けいかん)が目を閉じた瞬間、彼女は悟った。生きている限り、決して終わりではない。後池(こうち)の人生は、実は上古が目を覚ました瞬間に、新たな輪廻を始めていたのだ。

鳳染は鳳族の長老たちを率いて天階の果てに消え、三火は妖皇を守って妖界へと退却した。天帝(てんてい)と天后は景澗(けいかん)の遺骨を仙族の埋葬地である天辞山へと運んだ。

羅刹地の上空の腥風血雨は収まり、しばらくの間、黒雲沼沢の上空は静まり返っていた。

上古は相変わらず雲の上に座り、九重の雲海の向こうの世界を見つめていた。しばらくして、ようやく何もない空間へと視線を上げた。

「天啓(てんけい)、青漓の神力はあなたが与えたものなのか?」

紫色の神力が突然現れ、天啓(てんけい)が空中に現れた。少し気まり悪そうに鼻を触りながら言った。「以前、彼女が少しだけ私の手伝いをしてくれたので、護身の神力を与えたのだ。まさか彼女がこれほど大胆で、こんな騒動を起こすとは思わなかった。」

「そんなことはどうでもいい。蒼穹之境へ行って阿啓を連れて来い。」

上古は石の椅子から立ち上がり、遠くへと歩き出した。

「蒼穹之境へは戻らないのか?」

天啓(てんけい)は驚いた。上古は白玦(はくけつ)の傷を見ていたはずなのに、どうしてこのことを放っておけるのだろうか?

空中の上古はわずかに振り返り、眉間には冷然とした威圧感が漂っていた。「天啓(てんけい)、この世で私が最も信頼しているのはあなたたち三人だけだ。しかし……私はとても失望している。」

彼女は目を伏せ、笑った。「三界の誰もが知っていることを、私だけが知らなかった。妖族の小さな狐でさえ、二つの世界の主である私の前で問い詰めることができた……あなたたちがすべてを隠していたのは、この場面を見たかったからなのか?」

天啓(てんけい)は言葉を失い、わずかに手を上げた。「上古……」

「あなたたちが誰も話してくれないのなら、私が自分で真実を見つけ出す。」

上古は振り返り、遠くへと飛び去った。その後ろ姿は凛としていて、もはや迷いはなかった。

「どこへ行くのだ?」天啓(てんけい)は追いかけた。

「擎天柱の下へ。」

冷然とした答えが風に乗って届き、簡潔明瞭だった。天啓(てんけい)は追いかける足を止め、その場に立ち尽くした。

擎天柱の下、古帝剣が燃え上がらせた炎は百年燃え続け、尽きることはなかった。

彼と白玦(はくけつ)は実は知っていた。後池(こうち)の記憶を封印できる神器は、この世で古帝剣だけだということを。

後池(こうち)の数万年の人生は、あの炎の中に消え去り、すでに百年以上が経っていた。

古帝剣が上古の元に戻る時、それは後池(こうち)の記憶が蘇る時。だからこそ、彼はずっと白玦(はくけつ)に問いかけていた。上古界が開かれた時、後悔するかと。

天啓(てんけい)はその黒い後ろ姿を見つめ、寂しげな表情を浮かべた。

上古よ、たとえ無理やり本源の力を集めても、後池(こうち)の記憶を取り戻したいというのか。しかし、その時……後池(こうち)の怨みと憎しみも、一緒に取り戻してしまうのではないか?