概要/あらすじ
かつて武林に名を馳せた四顧門の門主、李相夷(りしょうい)。十年前、笛飛声(てきひせい)との死闘により深手を負い、江湖から姿を消した彼は、李蓮花と名を変え、探偵として第二の人生を歩み始めます。本作『吉祥紋蓮花楼』(別名『李蓮花探案集』)は、藤萍氏による武侠ミステリー小説で、李蓮花の活躍を描いています。
李蓮花は、かつての輝かしい姿とは裏腹に、温厚で聡明な人物として描かれています。過去の傷が癒えることなく、最終的には東海の柯厝村で隠遁生活を送ることになります。
物語には、李相夷(りしょうい)のかつての恋人であり、江湖一の美女と謳われた喬婉娩(きょわんべん)が登場します。彼女は李相夷(りしょうい)への想いを抱きながらも、最終的には肖紫矜(しょうしきん)と結婚を選びます。強い意志と誠実な愛情表現で、物語に深みを与えています。
そして、李蓮花の親友である方多病(ほうたへい)。武林の富豪の息子で、「多愁公子」の異名を持つ彼は、数々の難事件解決に李蓮花を支えます。
さらに、かつて李相夷(りしょうい)の腹心であった紀漢佛、雲彼丘(うんひきゅう)、白江鹑、石水の四人、「佛彼白石」も物語を彩ります。彼らは江湖の大侠として、それぞれの道を歩んでいます。
物語の舞台は、李相夷(りしょうい)と笛飛声(てきひせい)の決闘から十年後の江湖。様々な謎に満ちた事件が頻発する中、李蓮花は吉祥紋蓮花楼を拠点に、数々の難事件を解決していきます。「碧窓有鬼殺人事件」「一品墳事件」「石榴裙殺人事件」など、それぞれの事件はサスペンスと推理要素に満ち溢れています。
李蓮花は喬婉娩(きょわんべん)を救う際に毒に侵され、失明し右腕も使えなくなってしまう上に記憶も失います。最後は小さな漁村で、方多病(ほうたへい)と施文絶に支えられながら静かに暮らします。
結末で李蓮花の真の身分は明らかになりますが、彼は誰とも結ばれることはありません。初恋の相手である喬婉娩(きょわんべん)は、李相夷(りしょうい)が姿を消した十年間、幾度も自殺を図りますが、肖紫矜(しょうしきん)の献身的な愛に心を打たれ、彼と結婚します。方多病(ほうたへい)は昭翎公主と結婚し、漁村で李蓮花の面倒を見ます。そして笛飛声(てきひせい)もまた、江湖から身を引きます。
『吉祥紋蓮花楼』は、独特のミステリー要素と深い情感描写で多くの読者を魅了しています。李蓮花の活躍を通して、江湖の複雑さと人間模様の多面性を描き出しています。テンポの良い展開、重厚なサスペンス、個性豊かな登場人物、そして繊細な感情描写が高く評価されており、武侠ミステリー小説の傑作と言えるでしょう。
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